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AIによる業務効率化の専門家が語る、抗えない時代の流れを乗りこなすために必要なマインドとスキルとは?

2019.11.05

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2030年頃には、⽇本の労働⼈⼝の約49%がAIやロボットなどで代替可能になると言われています。(出典:NRI × オックスフォード⼤学)そんな未来に少なからず不安や危機感を覚える方も多いのではないでしょうか? 

「AIやロボットは敵対するものではなく、新しい仕事を生み出したり、あなたがやりたい仕事により注力するための良きパートナーになる」そう語るのは、 AIによる企業向け業務自動化サービスを提供しているAllganize(オルガナイズ)日本法人代表取締役の佐藤康雄さん。

今回の記事では、佐藤さんのキャリアや仕事観から、AI時代の働き方のヒントとなる考え方や身に付けたいスキルについて紐解きました。

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佐藤康雄(さとう・やすお)さん
– Allganize Japan株式会社 代表取締役
– 京都コンピュータ学院/大学院 客員講師
大学卒業後、Yahoo! JAPAN、楽天、nifty等に在籍し一貫して、新規事業の立ち上げ、事業マネジメントを担当。社会人学生としてMBA取得後、2010年よりスタートアップ領域でのチャレンジを開始。2013年、韓国5Rocks社の日本代表。2014年に同事業を米国Tapjoy社に売却。その後、Tapjoy Japan 執行役員、顧問。2017年、AIソリューションを提供する「Allganize社」を仲間とサンフランシスコにて設立。2019年に日本法人を設立し、現職。

人vsAIではなく、パートナーとして共存できる

—— 佐藤さんはAIによる業務自動化サービスを提供しているとお聞きしています。まずは具体的にどういった事業を行なっているのかを教えてください。

佐藤康雄さん(以下、佐藤):日米韓の企業を中心に自然言語理解(NLU)のAPIを提供しています。例えば、従業員向けにご利用いただいているAIチャットボットの「Alli」は、社内の様々な問い合わせに対し、AIが入力された自由記述の内容を理解しFAQの自動応答を行うなど、今まで社内の担当者が行なっていた作業をAIが代わりに行うことをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
他にも、大手企業からスタートアップまで、ビジネスシーンにおける数多くのワークフローを自動化・最適化し、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。

—— AIを活用すると便利になるのは理解できるのですが、技術が進化すればするほど、どこか怖さを感じる人も多くいそうです。

佐藤:人の手が入っていた作業を機械で自動化できれば、その作業を人がやる必要は無くなりますからね。ただ、AIを使って業務を効率化していく流れにはもう抗えないと思います。今はまだ一部ですが、今後すべての産業が大きく進化していき、一例ですが2030年頃には日本の労働人口の約49%がAIやロボットなどで代替可能になる(出典:NRI × オックスフォード大学)とも言われています。

しかしその一方で、AIは人と対立するものではなく、共存できると私は思っています。

—— 共存可能……と。そもそも、これからの働き方にAIはなぜ必要なのか教えてください。

佐藤:AIを導入するメリットの1つは、業務の圧倒的な時間短縮を実現できること。これにより今まで単純作業だけをこなしていたポジションが代替されることはありえますし、現にもう起きています。しかし、AIに対応する職業が新しく生まれたり、本来は人がしなくてもいい作業から解放され、より価値の高い仕事に向き合えるなど、良い面もあるんです。
さらには、AIを活用することにより正しい判断が下せるようになるのも本質的な利点だと思っています。

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—— 具体的にはどういったイメージでしょうか?

佐藤:例えば企業の人材採用において、エントリーシートを確認するフローがありますよね。人が行うと直前に見た他候補者のシートの印象が頭に残り、その人と比べる相対評価になったり、採用担当者の能力や体調・モチベーションなどでも評価の一貫性が落ちるなども考えられます。

一方でAIは常に絶対評価で質が保たれているため、そのリスクがありません。ソフトバンクさんの事例では、エントリーシートの確認にAIを導入し約75%の時間短縮を実現するなど効果が確実に現れてい ると発表されていますが、時間短縮だけでなく選考の客観性、一貫性の担保なども同時に実現していると考えています。

—— 先ほどAIと人の共存は可能とおっしゃっていましたが、正確さも効率も勝るAIに全て任せた方が確実とも思えてきました。

佐藤:それが簡単にはいかないんです。現在のAIの弱点は人が与えた条件下で最適に動くということです。前述の採用活動のシーンで言えば、(1)エントリーシートの内容・合否のデータ化(2)評価項目と通過基準の明確化などは人が行う必要がありますし、AI導入の目的に対する本質的な理解が進まないと組織の中では機能しないことも多いでしょう。

—— なるほど。AIだけで何かをやるより、一緒に何かをするイメージですね。

学びのアンテナを立て続けることが何よりも大事

—— お話を聞いていて、佐藤さん自身のキャリアや考え方からも、これからのAI時代を生きるヒントがたくさんありそうだと感じました。

佐藤:私はパソコン好きの父や叔父の影響で、学生時代からインターネットに興味がありました。会計・情報分析などを勉強し、エンジニアの道も志しました。しかしすぐにこの分野で勝負しても勝てないなと感じ、事業企画やプロデューサー、ファイナンスなどビジネスサイドのキャリアを歩むことに。

この時に感じたのは、ものづくりは必ずしも自分でできなくてもいいけど、多少なりともその分野を学んでいることで、プロジェクトの難易度を理解できたり、関係者と共通言語で話せるといいなということ。そのためには新しいスキルや時代のトレンドなどを学び続けることが何よりも大事だということです。ある分野のプロと一緒に何かをするにも、自分が学びを持って相対できないとお相手に失礼になりますし、全く進まないことも多いですからね。

その点はAIも一緒で、自分でAIを構築するプログラミングスキルを身につけるとなると大変ですが、AIでできることを知り、どのように組織や自分の働き方に応用できるかということにアンテナを立て、学び続けることが大事だと思います。

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—— 何かを学ぶ上で、佐藤さんが大切にしているポイントはありますか?

佐藤:海外の最先端の情報をキャッチアップすることはとても大切にしています。多くの有益な情報は国内だけでなく国外にも多くあり、その情報を得るために英語力を磨く必要もあります。同時に、英語ができると仕事のチャンスも増えるはずです。私自身、現在も英語は勉強中で得意といえるレベルではないのですが、外国人がいるイベントに参加した際に英語によるコミュニケーションで仕事のオファーをいただくなど多くのきっかけを得ることができました。

とは言え、英語はあくまで手段。本質的な学びがあるのは……例えば旅ですね。場所を変えるという行為は人にとても刺激を与えるようで、知らない土地に行き視野を広く持つと自分が小さい存在だと感じることもありますが、その分、今まで触れてこなかった価値観も知れますし、今後の人生にもその経験が生きてくるはずです。

—— 佐藤さんは常に学ぶことにアンテナを立てていると感じます。

佐藤:はい。今でもわからないことは素直に聞きます。また、相手を理解することも私が心がけている点です。会社員でもフリーランスでも経営者でも、人を巻き込みながら目指したいゴールに行くには、関係する人たちの得意・不得意を理解して協力を得ていく必要があるからです。

今回は記事のテーマの1つがAIですが、テクノロジーを「人の脅威」となるものとして捉えなくていいと思います。それより、AIの得意・不得意を理解し、得意とする部分と付き合うことで、「目指すべきゴールに向かう良きパートナー」として捉えるといいのではないかと思います。

技術のトレンドに、抗うより流れろ

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—— 佐藤さんのお話を聞いて、自分ゴトとしてこれからどのようにAIと付き合っていくか考えていきたくなりました。

佐藤:テクノロジーの進化によって、できないと思っていたことが、現在進行形でできる世の中になってきました。この進化はとても速く、会社も働き方もどんどん変わっていくはずです。

例えば、便利なGoogleのサービス「G Suite (旧Google Apps for Work)」では、AIによる機能がどんどん実装され、これがAIだと気づかないうちに皆さんは使っているはずです。

テクノロジーにはトレンドがあるので、これから起こるであろうAIを使って業務を効率化する流れには、抗うより乗りこなすスキルやマインドを身につけた人材がより必要とされるようになるはずです。

—— ありがとうございます。最後に佐藤さん自身の今後のビジョンを教えてください。

佐藤:若干唐突感もありますが、私の最終的なテーマは教育分野に関わることです。

実は現在も、京都コンピュータ学院/大学院で客員講師として定期的に壇上に立って講義をしています。具体的にはITやマーケティング関連の最新のトレンドなどを話しながら、この分野の課題について話し合うワークショップを行ったり、時には著名なゲストを呼んで講師も生徒もインタラクティブに学べる場を作っています。

なんで私が教育分野にそんな思い入れがあるかというと、自分自身の人生を振り返ってみても、学生時代に社会人の方々の生々しい声を聞けるというのはとてもいいことだと感じていたこと。そして、社会人になり会社組織の中で、いろいろな人に教わり支えられてきて、ビジネスの仕組みとロジックが多少なりともわかってきたこと。だからこそ、今度はそれを若い人たちに還元していきたいと思っています。恩返しの気持ちも大きいですね。

教育は人生をかけてやりたいこと。そのためにも、私自身が常に学び続けると同時に、表に出て学んだことをアウトプットしていく機会を増やしていきたいですね。

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Allganize Japan 

・取材/文/撮影:松田然

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