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インサイトレポート

保育園理事と保護者で向き合う、未来を作る子どもたちのために大人がすべき、シンプルだけど大事な話

2018.08.24

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専業主婦よりも共働き世帯のほうが多い昨今、働くママのニーズや期待が最も高い保育園。
保育園に預けられるだけ幸せという考えもありますが、保育園に預けているママ・パパは日中どのように我が子が過ごしているのか不安や、働いている時間に育児に向き合えない葛藤も抱えています。
そんなぶっちゃけた想いを、我がワークスイッチで働く現役ママが、実際に子どもを託している保育園理事長に直撃インタビュー!「茶々保育園グループ」運営団体の理事長を務める迫田健太郎さんに、お話を伺いました。子どもの今と未来のために向き合う、育児の問題点と可能性が見えてきます!

迫田健太郎(左)  立教大学経済学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現・株式会社アクセンチュア)へ入社。その後、保育業界に転身し、現在は茶々保育園グループ(社会福祉法人あすみ福祉会)の理事長 。 羽石知子(右)  2歳の娘を持つ1児のママ。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社ワークスイッチコンサルティングにて、業務改善や働き方改革のコンサルタントとして活動。茶々そしがやこうえん保育園  に娘を預けている。

迫田健太郎(左) 
立教大学経済学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現・株式会社アクセンチュア)へ入社。その後、保育業界に転身し、現在は茶々保育園グループ(社会福祉法人あすみ福祉会)の理事長 。
羽石知子(右) 
2歳の娘を持つ1児のママ。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社ワークスイッチコンサルティングにて、業務改善や働き方改革のコンサルタントとして活動。茶々そしがやこうえん保育園 に娘を預けている。

子どもと対等に接する保育園

入口には保育園での活動が分かるよう子どもの作品などを展示

入口には保育園での活動が分かるよう子どもの作品などを展示

取材をしたのは、日本初の都市公園内保育園として2017年4月に誕生した、『茶々そしがやこうえん保育園』。”オトナな保育園”をコンセプトに、 子どもの自主性や創造力を育む保育・教育を大切にし、育児の現場にデジタルツールを活用したり、食育の一環でビュッフェスタイルを採用するなど、柔軟な発想で幼児教育に取り組んでおり海外からも視察やテレビ取材が訪れる、先進的な保育園です。

羽石 いつも娘がお世話になっております。

迫田 こちらこそ。

羽石 当初、預ける保育園が”オトナな保育園”と聞いて、その意味がわからなかったのですが、興味深いエピソードとして、遠足で行く場所を保育士さんと一緒にディスカッションして、子どもたちが中心となって決めたことです。何を言いだすかわからない子どもに議論させ、決めさせるというのは非常に難しいことだと思いました。

迫田 あれは大変でしたね(笑)。保育士は日々の関わりで、子どもが考えていることが分かります。そこから何を引き出すべきかなど、うまくファシリテートしていきます。普通は子どもたちの歩ける距離を計算して大人が判断するのですが、子どもが「行きたい!」と思ったら、可能な限りサポートするのが、当園の方針です。安全面などを十分に考慮したうえで、子どもを子ども扱いせず、ひとりの人間として向き合います。

保育だけではない、保護者と地域に寄り添う園

子どもたちの写真をママ・パパに送る保育士

子どもたちの写真をママ・パパに送る保育士

羽石 保育園といえば、保育士と保護者でやりとりする連絡帳がありますが、こちらの園ではスマートフォンのアプリで連絡のやりとりができるので、とても助かっています。何よりも嬉しいのは写真が送られて来ることでした。

迫田 それはよかったです。保育士は業務用のスマホを持ち歩いていて、園での様子を撮影して写真をアップします。ママやパパだけでなく、アカウントを登録していれば遠方にいる祖父母にも送れます。孫のイキイキとした表情をいつも目にすることができるんですよ。デジタルは1対多に適したツールなので、良いものはどんどん採用していきますね。

 

園で過ごす子どもの様子を見ながら、家族間のコミュニケーションも活発に

園で過ごす子どもの様子を見ながら、家族間のコミュニケーションも活発に

羽石 また、この保育園には「ちゃちゃカフェ」という地域の方や誰でも利用できるカフェが併設されています。「ちゃちゃカフェ」はどうして生まれたのですか?

迫田 茶どころの埼玉県入間市で創業したこともあり、茶々ではお茶をすることで生まれるコミュニケーションを大切にしたいと考え、 「カフェのような空間」をひとつの理想として提供しています。カフェというのは、人と人が素直な気持ちで向き合って交流を広げる場であり、大人も子どももくつろげる場です。そういう意味もあり、実際にカフェを作ることにしました。
保育園の近隣住民の方にも好評で、立ち寄っていただいています。時折、小学生が集まって勉強していたりもしますよ。

羽石 私もたまにここを利用していますが、素敵な空間ですよね。

迫田 ありがとうございます。例えば、職場で忙しく働く女性が、園に来て急にママの顔に変わるのは大変だと思うんです。仕事の時間ともママの時間とも違う、どちらでもない時間というのがあることで、スイッチが切り替わりやすくなるのではないでしょうか。
また今は、地域の方も積極的に活用してくださることで、地域コミュニケーションの場にもなっています。これからも「ちゃちゃカフェ」を上手に活用してもらえたら嬉しいです。

保育園に併設されている「ちゃちゃカフェ」でインタビュー

保育園に併設されている「ちゃちゃカフェ」でインタビュー

デジタルツールならではの「学びの芽」の育て方

羽石 この保育園では、壁に子どもが触れられるタッチパネルや、エントランスにあるプロジェクタも連絡事項や動画再生で活用されています。素敵だなと思う反面、家では子どもからデジタルツールを遠ざけているのも実情です。

迫田 デジタルツールは、もはや生活に溶け込んでいるものです。あえて離すのではなく、上手く活用することで子どもたちの興味・関心やその良さを知ることが出来ると考えています。

羽石 デジタルツールの活用と言えば、YouTubeを見せてもいいものか、親としてはといつも悩むのですが……

迫田 その気持ちはわかります(笑)。私も子どもがいますが、見せると楽なんですよね。

羽石 え!? そこは同じなんですね(笑)。

迫田 教育者だって人間です。完璧な人なんていませんよ(笑)。同様に、完璧なママさんだっていません。私が子どもに動画を見せるときに意識するのは、“暇つぶしの道具にはしたくない”ということです。

羽石 どういうことですか?

迫田 例えば、子どもが公園でテントウムシを見つけたら、一緒に検索してみて、テントウムシの動画を探したりします。小さな身体に丁寧にたたみこまれていた羽を広げて飛び立つ瞬間の躍動感を感じる動画を、子どもと一緒に見るんです。それは書物や図鑑では味わえない感動ですよね。ようは使い方なんです。スマホもタブレットも、地球の裏側にいる人と一瞬で繋がることができる便利なツールです。人によっては「子どもにデジタルツールは絶対に持たせない」と言う方もいますが、そこまで固執する必要はないと思いますよ。

羽石 デジタルも上手に使えば、そこから教育を広げていくことができるんですね。

保育園の畑のカブを食べる蟻の映像。いつもと違った目線で虫に触れる

保育園の畑のカブを食べる蟻の映像。いつもと違った目線で虫に触れる

世界に誇れる日本の「食育」。家でできる偏食克服のヒント

小さな子も自分で配膳

小さな子も自分で配膳

羽石 茶々保育園の保育士さんたちは、海外へ研修に行かれていますが、海外から見た日本の保育の良い所はどこですか?

迫田 食育ですね。日本のように離乳食から丁寧に食を取り入れている国は他にないと思います。食と教育が密接に結びついて、その背景には食の文化があるんです。欧米の場合は文化にまで結びついておらず「食は栄養摂取である」という考え方が一般的。以前、デンマークの教育施設で当園の保育スタイルをプレゼンしたときは、あちらの方は日本の食育に対して一番ビックリされていました。

羽石 日本には四季があるので、季節の食材を使う点もそうですよね。

迫田 はい。海外の教育が全て素晴らしいと思う方もいますが、日本にも素晴らしい教育があるということです。

羽石 園の食事はビュッフェスタイルですが、それだと偏食になりませんか?

迫田 そう思われがちですが、そんなことはありません。子どもは一人一人、食べられる量が違いますよね。ビュッフェスタイルなら「無理矢理この量を食べなさい」とはならないので、苦手なものでも少しずつチャレンジして、食べられるようになります。それと、集団の力というのは面白くて、隣の子が食べているものを見ると自分も食べたくなるみたいですね(笑)。

自分で取り分けることで、自分の食べれる量を理解していく

自分で取り分けることで、自分の食べれる量を理解していく

羽石 子どもが偏食で悩んでいるご家庭は多いと思いますが、家でもできる偏食対策はありますか?

迫田 子どもに、食事を自分ごととして捉えてもらうことが大切です。待っていれば料理がポンと出てくる環境ではなく、子どもにも参加をしてもらう。一緒に買い物に行ったり、簡単な調理に参加してもらったり、お皿を運んでもらうことだって立派な食育なんです。そういうところからスタートしてもらえば、子どもが食に興味を持つきっかけになります。それが偏食を解決できる糸口になるかもしれません。
また、保育園では残さず食べるのに、家ではほとんど食べないと悩まれている親御さんもいらっしゃいますが、保育園でバランスの良い食事を提供して食べてくれているので、働くママが、家で料理をがんばりすぎなくても良いと考えています。

羽石 正直、栄養バランスは保育園に頼っているというママ友は多いです(笑)多少の罪悪感もありましたが、「がんばりすぎなくて良い」と言っていただけると、働くママとして非常に心強いです!

保育園は成長できる社会と教育の場!
幼稚園とは異なる、保育園ならではの強みとは?

ごくありふれた保育園の日常。その生活から学びは育まれる

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羽石 今の時代、子どもを保育園に預けることに抵抗がある親も多いと思います。とくに働くママは「自分のキャリアのために子どもを犠牲にしている」って周りに思われてしまうのも現実ですから。

迫田 実は、羽石さんと同じように、お子さんを 預けることに罪悪感を抱くママさんはとても多いのです。世の中には「女性は専業主婦になって子どもを育てるもの」という古い価値観をお持ちの方もまだまだ多いですからね。でもひとつ言えるのは、子どもにとって、親と一緒にいる時間だけが素敵なものではなく、友達といる時間、一人で遊ぶ時間など、それはそれで素敵なんです。むしろ、家庭とは違う場所があった方が私は良いと思います。

羽石 そこは私も同意見です。まだ小さな子どもに、家庭とは異なるコミュニティがあるのは幸せなことだと感じています。教育観というのは、上の世代の人や夫婦間でも違うことがありますよね。家族で同じ教育観を持つにはどうしたらいいのですか?

迫田 難しい質問ですね。私がいつも大切にしているキーワードに「多様性」という言葉があります。外国人の方など、文化が大きく違う人と接するときばかり多様性を意識しがちですが、実は、小さな違いに対しても同じなんです。意見の違いは尊重すべきで、違うからこそバランスが取れます。答えはひとつではないので、周りと考えをすり合わせていくというよりも、向き合っていくという表現が適していると思います。

羽石 多様性……ですか。

迫田 そうです。子どもだけでなく、親も多様性を持ったほうが良いと思います。子どもを保育園に預けることを親がネガティブに感じてしまうのは、多様性という意識があればそんな気持ちになりません。親はこうあるべき、家族はこうあるべき、と決めつけない方が幸せに近づけると思いますよ。

ホワイトボードには、園児らの発言で描かれた マインドマップ

ホワイトボードには、園児らの発言で描かれた マインドマップ

羽石 抵抗感があるもうひとつの理由が、保育園と幼稚園の差です。私の周りにも低年齢時は保育園に通わせていたけれど、3歳から幼稚園に入れるママさんがいて、それは「保育園より幼稚園のほうが教育的だ」というイメージが強いからです。

迫田 確かに、今まではそういう認識だったかもしれません。ですが、2018年の4月から国の制度がガラリと変わったんです(※)。保育園も幼稚園も、小学校に向けて同じ教育、同じ水準で進んでいこうとなりました。なので、保育園は教育的に劣るという考え方は、これからはなくなっていくはずです。

羽石 そうだったんですね。知りませんでした。

迫田 ただ、今後、保育園が幼稚園の真似をしていくのは、少し違うと思います。保育園のアドバンテージというのは、朝から晩まで子どもと一緒にいることです。つまり、お子さんの衣・食・住が全て詰まっています。子どもは生活すること自体が学びになり、それがのちに国語や算数などの教科に繋がっていくんです。本物の体験を生活の中でさせてあげられるのが、保育園の強みなんですよ!

※「保育所保育指針」の改訂
2020年からスタートする小中高の新学習指導要領の改訂に合わせ、新たな「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」が2018年4月より実施された。今回の改訂により、特に3歳以上児の教育的機能に関して「保育所保育指針」は、「幼稚園教育要領」との整合性を図りながら規定されている。(なお「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」も同様)いずれも小学校教育への円滑な接続を目的に、共通した「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が示されている。

子どものために、大人が変わらなければならない

保育園理事×保護者の初対談。 未来ある子どものために大人ができることを、真剣にトーク

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羽石 最後の質問です。子どものために私たち大人ができることは何でしょうか?

迫田 未来を作っていくのは、今の子どもたちなんです。それを大人が理解して、子どもと接していけるかどうか。子どもが大人になった時、どういう社会で生きているのか、その社会の中でどういう役割を担っているのか、何を発信していくのか、そういう視点で大人は子どもと関わっていくことが求められる。園の方針などでよく聞く「明るく元気な子」「思いやりのある子」を育てるというのも重要ですが、これからやってくる社会を真剣に考えて発信している言葉かどうかは、少し疑問が残ります。まずは、子どもを子ども扱いすることなく、対等に接ってしてみることから始めてみてはいかがでしょうか!

羽石 子どもたちの未来のためには、まず私たち大人が変わっていかなければならないですね。ありがとうございました!


茶々そしがやこうえん保育園
茶々保育園グループ(社会福祉法人あすみ福祉会)のひとつ。成城学園前駅から徒歩20分にある、都立祖師谷公園の敷地内に開園した保育園。0歳~5歳までが対象で定員80名。併設されたカフェ「ちゃちゃカフェ」は 近隣の方も利用が可能。
住所/東京都世田谷区上祖師谷3-10-3
電話/03-3232-0616(茶々保育園グループ・法人本部事務局)

文/佐々木翔
撮影/千々岩友美

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