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インサイトレポート

体験イベント×スマホでコラボレーション企画を「antenna*」で生み出す仕掛け人が語る、社内外を巻き込み、ユーザーに新しい価値をもたらす極意とは

2019.03.08

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マーケットが成熟し、新しい商品やサービスが生まれにくくなっている今、いかにして新しい価値を生み出していくのかは企業にとって大きな課題です。

「ココロうごく。キッカケとどく。」をテーマにコンテンツ提供するキュレーションアプリ「antenna* (アンテナ)」では、さまざまな企業とのコラボレーションイベントを実現することで、ユーザーにとって価値のある体験を提供しています。その仕掛け人は、コーポレートブランドマネジメント室室長の北見裕介さん。社内や社外の人を巻き込み、企画を成功に導くための極意を聞きました。

メーカーからIT企業へ。コラボレーションイベントを仕掛ける理由

——まずは、北見さんの現在のお仕事について教えてください。

北見裕介さん(以下、北見):僕の仕事上のミッションは2つあります。1つはキュレーションアプリantenna* の広報・宣伝担当、もう1つは会社全体の広報活動として、ビジネスコラボレーションが生まれる新たな取り組みを仕掛けることです。

企業とコラボレーションして開催する、ユーザー体験イベントとオンラインの連動企画に力を入れています。UCCさんのエスプレッソ講座や、キリンビールさんのクラフトビール飲み比べイベント、ルシアンさんの手芸ワークショップをはじめ、これまでにさまざまな企業様とのイベントを開催してきました。

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北見 裕介(きたみ ゆうすけ)
株式会社グライダーアソシエイツ コーポレートブランドマネジメント室 室長
2008年にワコール入社。情報システム部を経て広報・宣伝部 WEB・CRM企画課に配属。Web業務全般に携わる。2017年7月、資生堂ジャパンに入社。ECの戦略全般、SNS運用を担当。2018年1月に資生堂ジャパンを離れ、キュレーションメディアantenna* を運営するグライダーアソシエイツへ転職。


——メーカー側にいた北見さんは、なぜantenna* でいろいろな企画を手がけるようになったのでしょうか?

北見:メーカーにいた時も、店舗来店やECサイト誘導のような案件をいくつも担当してきました。その中でも意識的に、オンラインだけでなくリアルと連動させる企画をしようと考えていました。そのうちにメーカー側ではなく、アプリ側・プラットフォーム側・メディア側の立場に立って、ブランドと消費者のタッチポイント創出をしたいという想いが募り、antenna* を運営するグライダーアソシエイツのメンバーと意気投合して転職しました。antenna* でスマートフォンユーザーに向けたコンテンツプロバイダーとして面白そうなことができそうだと感じたからです。

——どんな点で可能性を感じたのでしょうか?

北見:普段使っているスマートフォンはとても便利なツールですが、情報を発信する立場からすると、五感のうち味覚・触覚・嗅覚を刺激するのが難しいという課題がありました。ですが体験イベントを開催すれば、スマートフォンの持ち歩ける特性を活かせます。会場に行く途中に商品の情報を調べる、イベントの写真を撮ることで思い出を持ち帰る、写真と感想をSNSでシェアするなど、より濃いユーザー体験を提供できます。体験できるというリアルの良さと、情報を得る・発信するというオンラインの良さがスマートフォンを通じて連動し、相乗効果を生み出すことができます。

——たしかにコラボレーションには相乗効果がありそうです。ただ、やると良いとわかっていても実際に行うにはハードルの高さを感じてしまいます。コラレボレーション企画を手がける時に北見さんが意識することはありますか?

北見:自分たちが得意なやり方で普段通り行える環境を意識して調整すれば、意外とハードルは低かったりすることも多いのです。

僕は原体験を大事にしていて、修学旅行の夜みたいなワクワクする感じが好きなんです。プライベートでは友人にドッキリを仕掛けたり、結婚式の余興に力を入れたり。それは僕にとって自然なことです。仕事は利益や売上を出す必要がありますが、驚きや感動を経由して商品やサービスを買ってもらいたいという想いがあります。仕事もプライベートも思想が一致しているんですよね。

——でも、みんながみんな北見さんのような性格ではないという意見も出そうです。

北見:はい、だからいいんです。得意なものが違うからこそ、コラボレーション企画が生まれます。

相手が自分のことを手伝ってくれるようになる方法

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——コラボレーションを企画する時は、自分の得意なことで勝負するのがいいのでしょうか?

北見:そう思います。僕は学生の時に成績があまりよくなくて付属校なのに大学に上がれなかった。生徒会長だったのに、です(笑)。他にも、図工とか美術などのものづくりもとても苦手でした。

その反面、自分の回りの人を笑顔にすることは楽しくて取り組む負荷を感じなかったし、問題を発見してディベートすることはできた。社会人になってからも「北見は会議に呼ぶといろいろアイデアを出すから呼ぼう」と、他社の方からお声がけいただくことも多いし、当社の広告営業もそう思ってもらえていると思います、きっと。「北見を同行させると面白くなるぞ」と。

僕自身があまり得意ではないからこそ、しっかり勉強する人やものづくりができる人に対して、リスペクトする気持ちがあります。僕はそんな人が自分の近くにいることを世の中に自慢したいし、その人がつくったモノ・コトが世間に受け入れられたらきっと楽しくなるぞ!と思って行動すると、良いコラボレーションが生まれます。

——まずは自分自身を知った上で、得意も苦手もオープンでいることが大事なんですね。

北見:はい。自分がオープンではないと、相手もオープンになってもらえないと思います。もちろん会社に損害を与えるようなことはオープンにしてはいけないのですが、そうでなければ苦手なことも伝えていいと思います。特に関係者を巻き込む際は、誰よりも先に伝えたり、メリットを考えて伝える必要があります。

ここはコラボレーションする際にすごく大事なことなんですが、隣の人や隣の部署の人が、どんなKPIを持っているかを意識して巻き込むと、自分のことを手伝ってくれるようになるんです。

イベントを企画したいと思っていても、集客が大変だったり、当日のお客様への対応への不安から一歩を踏み出せない人がいたとします。でもそんな時、隣の部署のPR担当や広報部のメリットを考えて企画したら、相手はプレスリリースを出したくてしょうがなくなるかもしれない。営業部のメリットを考えた企画なら、イベント当日のお客様対応は営業が担ってくれるかもしれません。忙しい時でも相手にメリットを言語化してきちんと伝えれば、優先順位を上げて対応してもらえるのではないでしょうか。

やりたいことは、小さな日常の中で試してみる

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——他に、北見さんが企画を仕掛ける時に意識していることはありますか?

北見:冒頭でも触れましたが、プロジェクトが何であれ普段通り行うことを意識しています。特別なことをやるより、日常のほんのちょっとの改善で世の中にその良さを気づいてもらうことができることも多いのです。

——例えば、どんな事例がありますか?

北見:直近で実施した、エスプレッソタイプのコーヒー「Largo(ラルゴ)」のコンセプトショップ「Largo Cafe & Bar Lounge presented by UCC」の事例がわかりやすいかもしれません。

まず、質問ですがコーヒーのエスプレッソはよく飲みますか?

——あまり飲むことはないですね。何だか苦くて濃い印象があります。

北見:そうですよね。でも、本物は香り高いんです。と、僕が実際にお店に行って感じました。僕ももともとは全然知らなくて、Largoのお店で初めて知ったレベルなんですけど(笑)。そして、そのエスプレッソからカフェラテがつくられるんですよね。カフェラテのつくり方としては当たり前なのですが、普段意識することがないなぁと。お馴染みのカフェラテはエスプレッソの良し悪しがとても大事な飲み物です。本物を体験するとその良さがわかります。

その自分の感動体験から、イベントを相談しながら企画していきました。参加した方に同様の感動体験を得てもらえるように想像しました。そして、チャンピオンバリスタが淹れるコーヒーを楽しみながらエスプレッソの奥深さを知ることができるイベントのプログラムができました。

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参加者からは、「今までブラックコーヒーばかり飲んでいたけれど、イベントを機にエスプレッソやカフェラテを飲むようになった」という声が早々に返ってきました。さらには、アプリのイベント記事の情報を通じて、イベントに参加していない人にまで興味を持ってもらえました。

でも、僕が仕掛けたことは特別なことではありません。本来、自宅やコーヒー屋さんなどどこでも飲めるエスプレッソやカフェラテを、意識的に「楽しんで」飲める世界観を伝えたにすぎません。

まったく新しいことをするのはプレッシャーも大きくハードルも高いですよね。ゼロからの新しさではなく、”目新しさ”を作ることが大事だと思っています。数年前流行っていたことでも、最新の技術を使ったり、今の時代に合わせて提供したり、と。

——なるほど、目新しさ。わかりやすいですね。北見さんは会社の枠を越えて活動しながら、自社の事業に貢献する働き方をされているようにも感じます。社外の活動をする上でポイントはありますか?

北見:プライベートの場合、もっと小さな日常の中でいろいろ試せますよね。例えば、Facebook広告を数千円くらいの少額で出稿してみて、企画したイベントに何人反応するかテストしてみたり。まぁ、なんでそんなことをするんだと言われそうですが(笑)。

僕の例でいうと、現職に就くまでは本職として広報の仕事を経験したことがなくて、いつかしてみたいとずっと思っていました。そこで4年程前に、アルティメットというフライングディスク(フリスビー)を用いたスポーツ競技の大会を企画し、その機会に合わせてプレスリリースを作成して流してみようと考えました。どんな形で新聞社に持ち込めばいいか実験してみたのです。結果、さまざまな媒体に取り上げていただき、大手企業・ブランドの後ろ盾がない状況で、そう、個人でもそういうことができたことが自信となり、今の仕事にも繋がっています。

他にも、どうやったらYouTuberになれるのかを実験するために、プライベートで動画コンテストに応募したらあるメーカーのCMに採用されたこともありました(笑)。その経験が本業でユーザー参加企画をする際に活かせました。面白そうと思ったことはまずは小さくてもやってみる。そうするといろいろな学びになると思います。

コラボレーションの秘訣は得意と得意の掛け合わせ

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——北見さんがこれから仕掛けていきたいのはどんなことですか?

北見:今、興味があるのは例えばアートですね。僕自身、その才能はありませんが、アート作品が制作される時の思想や背景にはとても関心があり、アートを作っている人を応援したいなと思っています。

メーカーのWeb担当からなぜIT企業へ転職したのかと聞かれることも多いのですが、立場が変わっても僕の仕事の根底にはモノづくりへのリスペクトがあります。世の中には、モノはいいのにあまり認知されていない商品やサービスがたくさんあります。モノの良さを発信することは僕の強みを活かせる分野。そんな風に得意と得意が合わさることで新しい価値を作ったり、得意と得意でお互いの苦手を共有して埋めていくようなコラボレーションを今後も仕掛けていきたいですね。


antenna*
https://antenna.jp/

・取材/文/撮影:松田然

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