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【Why? IBARAKI】 地方企業がインターンシップで得られる、人と地方のふるさと的関係性とコミュニティ
―日立市 若松佑樹さん

2018.10.26

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地方企業が抱える「人材不足」という課題を、インターンシップという手法で解決している会社が茨城県日立市にあります。
地元学生の多くが東京進出してしまうために採用にも苦労している地方企業が多い中で、インターンシップを通して紹介する学生たちは、地方企業の魅力をきちんと理解し、会社と学生の間に厚い信頼関係が結ばれているケースが数多くあります。更に、そのような人と会社の繋がりから、地域活性化に発展している事例もあるようです。
地方企業がインターンシップを受け入れることで何が変わるのか? インターンシップにおいてミスマッチさせないためのコツとは? 地方の中小企業と若者をつなぐ、株式会社えぽっく代表の若松佑樹さんにお話を伺いました。

インターン生の成長と共に、人と地域の新しい関係性が生まれた

▲インターンシップに参加した 学生の皆さん

▲インターンシップに参加した 学生の皆さん

若松さんが取り組むインターンシップは茨城県・県北の中小企業に約1カ月以上の実施期間を設けて県内外の学生を呼び込むという取り組みです。インターンシップ期間中の学生は、企業が実際に推進する事業に参加し、実践的な業務を行います。実際に若松さんが茨城県で実施したインターンシップでは、学生にとっても企業にとっても、東京の大手企業が行うインターンシップとは違った効果が得られると言います。

ー企業と学生をマッチングさせた具体例を教えていただけますか?
「事例はたくさんあるのですが、1つあげるとしたら、日立市の海辺の旅館『うのしまヴィラ』ですね。この旅館は2011年の東日本大震災で流され、3年かかってようやくリニューアルオープンしました。そこの社長は『人と人がつながることで地域が盛り上がる』という考えをお持ちの方で、震災から支えてくれた地元住民やお客様への感謝祭をやりたいという計画があり、そこに東京で建築とコミュニティデザインを学んでいる学生をマッチングさせました。最初は学生も受け身がちでこのままで大丈夫かなと心配になった時期もありました」

▲震災後、修繕されたうのしまヴィラ

▲震災後、修繕されたうのしまヴィラ

ーインターンシップを行った約2カ月間、どんな取り組みがあったのでしょうか?
「学生が旅館に泊まりこみ、約2カ月寝食を共にしてイベントの計画を練り上げていきました。家族のように過ごす中でお互いに信頼関係が生まれていましたね。また自然に囲まれた中でインターンシップをやると学生オープンマインドになる効果がありました。それまで内向的だった学生がどんどん積極的になり、自分からイベント実現のために地元の人に話しかけ、協力して動くようになったんです。そのおかげもあってか、徐々に地域が盛り上がり、関係者の団結力が強くなっているのを感じました」

ーインターン終了後、どんな収穫がありましたか? 
「感謝祭のイベント当日は約200人の集客ができて大成功に終わりました。ただ、それ以上に嬉しかったことは、報告会で学生が地域活性化とはどんな状態のことですか?と聞かれた時に『人と人がつながることで地域が盛り上がる』と答えたんです。その言葉はまさに、このインターンシップを始める前にうのしまヴィラの社長が話していたことと全く同じで、その言葉通り学生は人と人のつながりを作り、地域を盛り上げてくれました。学生と地元の人が一緒になった“チームうのしま”というコミュニティも生まれ、その後も継続的にイベントを開催しています」

▲うのしまヴィラ感謝祭の様子

▲うのしまヴィラ感謝祭の様子

人と地域の新しい関係性を創出する鍵は企業の本気度

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これまで、地元の旅館、ホテル、工務店、納豆メーカー、FMラジオ局など多種多様な企業が参加した長期実践型インターンシップ。この取り組みでは、かねてから企業が課題意識を持っていたことをプロジェクト化し、その課題解決を推進していきます。当初はインターンシップってなんですか?という企業も多く、「初回はやってみたけど、2回目は…」というミスマッチもあったそうです。

ー地域活性化まで繋がったうのしまヴィラのように、インターンシップの取り組みが成功する企業と失敗する企業の差分は何ですか?
「本気で課題としているプロジェクトをやる意思があるかどうかです。学生に来てもらって何でもいいから何か新しいことをやってもらおうみたいな、ふわっとした気持ちだと出だしから上手くいきません。当初は何でもいいから若者の斬新なアイデアもらいたいという、他力本願的というか棚ぼた的考え方が多かったですね。けど、そういったスタンスだと、学生にやる気があるのかどうか見抜かれてしまいます。まず、企業自身が「このプロジェクトを達成したい」と本気で考え、次に学生と一緒にやりましょうというスタンスを持っていることが重要です」

ーその意識を変えるために何をしたのでしょうか?
「まず、本気でプロジェクトをやる気があるか会社のトップと話しました。もしインターンシップのために用意した即席のプロジェクトなら意味がありません。企業と学生は先生と生徒ではなく、一緒にやる仲間で同じゴールを目指すチームだということを訴えていきました」

ー企業側との調整がある一方で、インターンシップに参加する学生を地方に呼ぶことも難易度が高いのではないかと思います。どうやって学生を呼ぶことができたのでしょうか?
「一般的に、地方の中小企業は多くの学生にとって、地味でつまらないイメージを持たれてしまっています。そんなマイナスからのスタートというような状態だったのですが、会社の生の声=社長の声を学生に伝えるようにすることで、学生に地方企業について興味をもってもらうようにしました。この社長は面白そう、この人と一緒にやってみようと思ってもらえたらいいなと。私自身、これまで仕事をしてきた経験から1対1の信頼感が大事だと感じていました。結局は、『うのしま』の時も一緒です。あの時は、長期間同じ屋根の下で、社長と学生が膝を付け合わせて議論を重ねた結果、お互いの間に信頼関係が出来上がりました。中小企業のイメージを変えるのは社長です。会社の規模の大小ではなく、社長の人間味を伝えることで不安を払拭していきましたね」

インターンシップは企業が選択できる、多様な人材選びの一例でしかない

▲株式会社えぽっくのオフィスから見える茨城県日立市の景色

▲株式会社えぽっくのオフィスから見える茨城県日立市の景色

ー今後この地域を具体的にどう活性化していきたいですか?
「インターンシップという方法をきっかけに、茨城県・県北エリアに『多様な人材を活用できる町』という文化を作りたいと思っています。地方の企業がインターンシップの学生ような社外人材の受け入れに慣れていくことで、例えば、子育てや介護で週3日で1日4時間しか働けない人、平日は都内で3日、週末は地方で2日仕事する人など、これまであまり地方企業になかった多様な人材を事業づくりにうまく活かせると思います。
最終的には遠くから通う形でもその地域に関わりたいと思う人を、どううまく仲間にしながら仕事をしていけるかが地方を元気にさせる鍵だと思います」

ー地方活性化=移住、じゃなくてもいい。遠くから通ってでもその地域に関わるというワークスタイルにはどんな未来があると思いますか?
「人口が減っていく地方だからこそ、そうした多様な人との多様な関わり合いが今後重要になってくると感じています。やはり都会から田舎にくると、圧倒的に自然が多いですよね。自然の中でクリエイティブな活動をするとその場所に愛着が湧き、「ふるさと化」します。一度「ふるさと化」すると、例えその人がその土地に住んでなくても、土地と人の間に関係性が生まれるわけです。今後の活動を通して、そんな第2、第3の故郷と思って関わってくれる人が増えて、ひいてはその地域の活性化に繋げていけたらいいなと思っています」


●プロフィール 若松佑樹
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1985年茨城県日立市生まれ。大学で生物学を専攻し、大学院卒業後はベンチャーのネット広告会社に入社。業務プロセス改善プロジェクトの立ち上げや、SNS、スマートフォンを活用した新規事業開発を行う。その後、食と農のシンクタンク(研究機関)に移り、地域の特産品を使った商品開発、地域資源調査、6次産業化(農家や水産業者に食品加工、流通機能を持たせること)の人材生育事業の立ち上げを経験。
30歳を目前に地元にUターンし、2014年~2017年まで茨城県県北地域の「地域おこし協力隊(※)」として、これまでの事業開発や人材育成などの経験を生かし、インターンシップ事業に従事。2018年1月株式会社えぽっくを設立し、引き続き、茨城県北地域を中心に人材マッチング事業を展開している。

※地域おこし協力隊
2009年から制度化された地方自治体が募集を行なう町おこし事業。人口減少や高齢化が進む地方を活性化するために、都市部から人材を受け入れ、町おこしに協力してもらい、住民との交流、定住を図るための組織。2017年度は997の自治体で4830人*の協力隊員が活動している。(※総務省の「地域おこし協力隊推進要綱」に基づく)

茨城移住計画 イベント情報
10/29(月)
複業という働き方を通じて地方と関わる。Work Design Lab✕茨城移住計画【会場はTIP*S】
https://wdlibaraki1.peatix.com

11/8 (木)
stand 鍋部とコラボ! けんちん鍋とホオヅキ農家
https://ibarakiiju13.peatix.com

11/22(木)
学びとはなにか。学生と茨城プロデュースをしよう_イノライブ_働き方を通年話せる場「stand」
https://ibarakiiju14.peatix.com

取材/高沢由香
撮影/間壁 一晴

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