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先進的な地方企業が既に取り入れている複業制度 人手不足解消の手がかりとなる、地方×複業の可能性とは?

2018.11.23

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2018年までにソフトバンクやヤフー、新生銀行など首都圏の大手企業が複業(副業)を解禁しましたが、主要都市以外の地方の中小企業ではその実態があまり理解されていないケースが多々あります。
しかし、まだ地方で複業が浸透していない中、複業制度を取り入れた地方企業では、人手不足の解消はもちろん、それ以上の効果が出たという実例が過去にいくつかあるのです。
そこで、数々の地方企業と首都圏複業ワーカーを繋いできた一般社団法人Work Design Lab の代表 石川貴志さんに「複業がもたらす地方企業の未来」というテーマでお話を伺いました。
インタビュアーは複業研究家の西村創一朗さんです!

※記事中で扱う「複業(副業)」は、副収入のために働くという考え方ではなく、本業に相乗効果をもたらすような仕事を本業と並行して行うこと、という意味で使用しています。

▲複業と専業フリーランスの働き方の違い/複業ワーカーの働き方

▲複業と専業フリーランスの働き方の違い/複業ワーカーの働き方

・話し手:石川貴志
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一般社団法人Work Design Lab代表理事、複業家、 (公財)ひろしま産業振興機構の創業サポーター など
Work Design Labとして、首都圏の複業ワーカー向けのセミナー開催や、様々な地方企業をコンサルティングし、地方企業と首都圏複業ワーカーのマッチングを行っている。

・聞き手:西村創一朗
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株式会社HARES代表取締役、ランサーズ株式会社 複業社員、複業研究家、HRマーケター など
2018年12月には自身初の著書となる『複業の教科書』をディスカヴァー・トゥエンティワンより出版予定。
Twitter: @souta6954

複業がもたらす地方企業の未来 - 複業の実態と、そのメリットとは?

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そもそも「複業」とは?

西村-いま、地方×複業はホットトレンドになってきています。Work Design Labの活動も交えて、まず石川さんが地方における複業をどんなものとしてとらえているのか教えていただけますか?

石川-Work Design Labでは、複業推進について様々なことを行っているのですが、そのうちの1つに地方企業と首都圏の複業ワーカーをマッチングさせるという活動をしています。
直近ですと、茨城県が推進している「茨城県トライアル移住・二地域居住推進プロジェクト」という取り組みに参画しています。この取り組みでは、経営や人材不足に課題を抱えている茨城県内の企業と首都圏の複業ワーカーをマッチングさせるために、まずは県内企業へ複業制度の説明などを行い、人事や採用に対する意識醸成を試みています。
地元や地域のために何か複業で貢献したいという熱意ある複業ワーカーは首都圏を中心にたくさん増えてきています。この人材を茨城県をはじめ、地方に届ける仕組みづくりをしていきたいと思っています。

西村-ふるさと納税の仕事版みたいなイメージですか?

石川-そうですね! 自分の故郷や観光で行って気に入った地方にお金で支援するのではなく、仕事で支援するという仕組みづくりができればいいですね。

西村-では、地方企業にとって複業ワーカーってどんな存在として捉えたらいいものだと考えていますか?

石川-そんなに新しい存在として身構える必要はなくて、ただ単にこれまで外の会社に発注していた仕事の発注先を複業ワーカーに変えるというような解釈で問題ありません。例えばWEBページの制作・運用など、元々その会社が不得意としていた部分を、東京のWEB制作会社に発注するのではなく、複業ワーカーを採用、もしくは複業ワーカーに発注することで解消するというようなイメージです。

複業のメリット - 人手不足解消と離職防止

西村-では、地方企業が複業制度を取り入れることでのメリットってどんなものがあると思いますか?

石川-一言で「複業」と言っても、「社外の人材を社内へ受け入れるという複業制度」と「社内の人材を社外へ送りだすという複業制度」の二つの軸があります。

まず1つめの「社外から社内へ」という複業でいうと、地方企業の人材不足を解決してくれます。人が足りないなら人を雇えばいいという考えが一般的ですが、複業ワーカーなら正社員一人を雇うよりも低コストで、各会社が不足している部分をピンポイントで補完する形で人材採用できます。

2つめの「社内から社外へ」という複業はというと、社員の育成、企業のブランディングにおいて有利にはたらいてくれるというのがメリットになりますね。
例えば、ある会社が自社の社員を、週の約半分の労働時間内でという条件の下、別の業種の会社で複業を許可したとします。そうすることで、社員がより顧客目線になれたり、業務の見直しができたりと良い効果が期待できるという訳です。
出向などとは異なり、本業の改善をリアルタイムで行えたり、2つの組織に同時に属し、比較することで、それぞれの組織をより客観的に見ることができるというのが特徴ですね。

▲文中にある、週の半分、他の会社で複業を行う場合の稼働時間イメージ

▲文中にある、週の半分、他の会社で複業を行う場合の稼働時間イメージ

西村-「社内から社外へ」の話で、地方企業が複業を解禁することで、離職防止につながるという点でもメリットがあると思うのですが、いかがでしょうか?

石川-地方企業の場合、社員の所得上昇と離職防止という面でメリットは確かにあります。会社として給与アップは早々できませんから、複業解禁することで社員自身で所得を増やしてもらえば助かります。
だた、複業制度を取り入れさえすれば離職率が下がるのかというと、これはまた違います。
結局は、働きにくさを解消すれば離職しないのですから。社員にとって働きにくいと感じている部分は何か、企業が課題を見つけ、解決することが重要ですね。

地方における複業事情 - 複業を受け入れるには?

地方での複業の認知度はほぼゼロ?

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西村-複業の概念って地方企業ではどの程度認知されていると感じていますか?

石川-現状はまだまだ認知されていないと思います。地方で会社を経営している人に話すことが多いのですが、「複業」という言葉を使うともうほとんど通じないので、地方の仕事の時は「全く同じ意味ではないですが、パートタイムをイメージしてください」など「複業」とは別の聞きなれた言葉を使って複業の説明をします。

西村-一度複業を説明した後の理解度ってどの程度の手ごたえがありますか?

石川-肌感覚で言うと、複業って結構いいねと言ってくれる経営者の方が5割。3割からは「よくわからない」という意見をもらうことが多くて、残りの2割は複業を受け入れてくれないといった印象ですね。「イシカワさん、複業はちょっと悪でしょ」みたいなイメージです。

複業ワーカーを受け入れるにあたってのネックは「業務の切り出し方」

cp

西村-複業について理解してもらえて、「いいね」と言ってくれる企業がいるわけですけど、結局「やりたいけどやれない」状態の会社もあると思います。なぜ、あと一歩を踏み込めないのでしょうか?

石川-原因は2つあると思っていましてまして、1つは、マインド面。
個人の複業ワーカーは嫌だという企業はまだまだ多いと思います。先ほどの2割の会社が複業を受け入れてくれないという話に戻りますけど、一定数の会社は、体制を変えることにアレルギー反応を示して「無理に会社を変えたくない」という考えを持っています。

2つ目は具体的にどこの業務を切り出せばいいのかわからないという企業が多いことです。
実際に過去Work Design Labであったことなのですが、とある運送業の会社で、「複業ワーカーを活用してみたいけど、どこの部門でやればいいのかわからない」という相談を受けたことがあります。コーポレート部門であれば、人事、広報、財務など、切り出しをできる部分が絶対あります。ただ、プロフィット部門は三者三様で企業の数だけ仕事の進め方があるので、複業ワーカーで解決できる切り出し方を見つけることが必要になってきます。

西村-つまり、地方企業はビジネスプロセスを分解してどの部分を複業ワーカーに頼むかはっきりすべきということですね。
僕の話になってしまうのですが、僕の会社(HARES)でHARES WORKSっていう、週2週3の正社員を募集するサービスを始めたんです。首都圏の会社が相手でも、いかに企業が抱えてるビジネスプロセスを分解して、「ここの業務だったら外に出せそうだね」みたいなことを、しっかりやってくのが足元の課題です。

複業ワーカーの具体的な活用方法

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西村-例えば正社員で働いている人が複業解禁となった場合、多くの会社員は、実際に動ける時間は平日早朝、夜間、土日祝日に絞られてしまいますが、受け入れ企業側は平日昼間に働いて欲しい。この時間のズレはどうやったら解消できるでしょうか?

▲平日の夜や土日メインで働く、複業ワーカーの稼働時間イメージ  平日の日中には、本業があるため稼働ができない

▲平日の夜や土日メインで働く、複業ワーカーの稼働時間イメージ
 平日の日中には、本業があるため稼働ができない

石川-そこを解決するには平日の日中しか動けない人や、平日の夜、もしくは休日しか動けない人など、稼働時間が異なる人同士が、お互いの仕事をおぎなえるようにチームを組むことが有効な手段のひとつです。
そもそも時間制限のある複業ワーカー個人の力で、地方企業の課題を何から何まで解決するっていうのは正直難しいです。
例えば、平日の夜にしか稼働できない複業ワーカーには課題発見まで行ってもらい、その後の課題解決に関しては、平日の日中に動けるワーカーに引き継ぐなど、上手くチームで連携できるような体制を作ることが重要になってきます。

地方企業が最初に取り組むべきこと

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西村-では最後に、複業ワーカーに仕事を依頼したい企業がまず最初にやるべきことは何だと思いますか?

石川-主に3つありまして、
1.複業制度について学べる場に足を運ぶこと
2.自社の課題を明確にすること
3.自社がどんなことをやっているのか、なぜやっているのかをきちんとメッセージとして打ち出すこと
ですね。
ただ、1の「複業制度について学べる場」はまだ地方で頻繁に開催されているわけではありません。そのため、地域と都市をつなぐような仕事、もしくは同じような活動をしている人と接点を持つというのも有効な手の1つです。そのような人と繋がっていれば、自然と情報が入ってくるので、複業への理解が深まりますし、いざ複業制度を受け入れるとなった時に、動きやすいと思います。
加えて、2と3がなぜ大切かと言うと、先ほど、「複業をすることで個人の収入が増える」という話がありましたが、最終的な複業ワーカーの原動力は、複業によって得られるお金ではなく、地域や会社に対する共感です。なので、「○○の業務を依頼できる人が欲しい」と言えるまでに自社の課題を明確にして、その人に対して会社が持っている誠実な想いを打ち出していくことが重要になります。

それともう1つ加えるとしたら、テレワークができる環境を整えるなど、IT化を進めることですね。複業ワーカーの仕事は、休日など、必ずしも定時時間内に行われるものではないし、毎回出社するわけでもないので、そのような状況下でも連携が取り合える環境を作る必要があります。

西村-複業を取り入れたいのにIT化されていないのは、パスポートを持たずに海外旅行に行きたいと言っているようなものですね…。Zoomのようなウェブ会議ソフトや、SlackやWowTalkのようなコミュニケーションツールが導入されていることのは最低限の条件ですね。

石川-はい、テレワークができる環境が整備されていれば、「せっかく会社に共感してくれた複業ワーカーが活躍できない」なんてこともないので、複業を考えている会社はぜひ首都圏にいる複業ワーカーを社外人材として受け入れる体制づくりを進めてほしいですね。

西村-首都圏にいるワーカーで「地方に貢献したい」って思っている人って本当に最近増えてきているので、あとはその熱量の受け皿を地方にどれだけ作れるかですね。本日はありがとうございました。

石川-こちらこそありがとうございました。


取材・文/高沢由香
撮影/間壁 一晴

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