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宇宙事業で失敗。ゼロベースで考え見えた「原体験」でビジネスを立ち上げる。HRTechベンチャー社長インタビュー【後編】

2019.12.17

BtoA石原社長x竹下対談_9

前編の記事で「テクノロジーで人事を進化させるために、日本企業が乗り越えるべき壁とは?」についてお話いただいたHRTechベンチャー、株式会社BtoAの代表取締役CEO・石原史章さん。
今回はその後編として、石原さんご自身がHRTech事業を創業するに至った原体験や、現在に至るまでの裏話を語っていただきました。

日本の人事マネジメントに、イノベーションを起こしたい

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竹下:前編に続き、ここからは石原さんご自身の「創業ストーリー」を伺いたいと思います。石原さんが立ち上げた株式会社BtoAは、従業員体験(Employee Experience)を効率的に高めるプラットフォーム『BetterEngage』を提供していらっしゃいますよね。

石原:はい。『BetterEngage』では、社内に点在する多様な人事データを自動で統合し、包括的な人事データベースを構築します。これにより人事業務の効率化を図るほか、能力・スキル・個性・勤務態度・評価・目標など社員一人ひとりに関する全てのデータをもとに、最適な人材マネジメントを実現します。

このサービスは基本的に無料で提供しています。「データドリブン×HR」の時代を見据えて、今は過去のデータも含めた統合的なデータベースを作ることにフォーカスしましょう、と打ち出しているので。現在、500人以上規模の中堅~大手企業さんに導入いただいており、多いところでは従業員15万人分くらいのデータを入れていただいています。
なお、ピープルアナリティクスのコンサルティングサービスについては有料で提供しています。

竹下:HRTechの世界に入られるまでには、どのような経緯があったのですか。

石原:実は、学生時代の専攻は「言語学」でした。なぜ、言語学かというと……高1の頃、英語の偏差値が35くらいだったんですが、当時の彼女がアメリカに引っ越したので、追いかけて行くために猛勉強したことがあったんです。そのとき、学習法の違いで習得スピードがまったく変わることに興味を持ち、言語習得論を学ぶ道へ進んだんです。

言語学者を目指してスタンフォード大学とカナダのブリティッシュコロンビア大学にも留学したんですが、経済学の授業も受けるうちに、経営に興味を持つようになって。また、留学中にFacebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏の講演を聴いたり、ルームメイトが起業していたりと、いろいろな影響を受けて、ビジネスへの興味のほうが強くなったというわけです。

留学中に就職活動をして外資系投資銀行から内定を得ていたんですが、帰国後1年半ほどは時間があったのでベンチャー企業でインターンを始めました。その頃にPort株式会社の春日社長に出会い、「この人のもとで働いてみたい」と入社を決めたんです。

竹下:外資系投資銀行の内定を辞退してベンチャーへ。その選択の決め手になった理由は何でしょう。

石原:「自分が将来どうなりたいか」という姿にフィットしたのが、その選択でした。僕は「イノベーション」という言葉がすごく好きで、今までになかった新しい価値を生み出していきたいと思ったんです。あとは、留学中にYouTubeで観ていた『龍馬伝』のドラマにも影響を受けたかな。人生1回くらい言いたいじゃないですか。「日本の夜明けは近いぜよ」って。

起業後初の事業に失敗。「原体験」にもとづいて考え直した

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竹下:それでPort社で経験を積んだ後、起業をされたのですね。

石原:Portではインターネットメディアなど、新規事業の立ち上げをやりました。インターン含め1年半も経った頃、自分でやりたくなって独立したんです。最初は宇宙関連ビジネスから始めましたが、未経験領域だったのでことごとく失敗(笑)。そこで軸足を移した先が今のHRTech事業です。

ゼロベースから事業を考え直したとき、自分の「原体験」をもとにしたサービスをつくろう、と。僕はPort勤務時代、総勢60人のチームのマネジメントを行っていました。その頃マネジメントに本当に悩んだ経験があります。だから、その悩みを解決する事業をつくろうと思ったんです。

竹下:その方向性が決まって、何から始めたのですか?

石原:僕はいつもアメリカ中心に事例研究をするんです。そこで、「マネジメントもデータドリブンの時代だよね」と。USではすでにそれがトレンドとなっていて、日本ではまだまだこれから。そのオープンスペースに入っていったんです。

そこで最初につくったサービスが、「Prizy」というピア・ツー・ピア・ボーナスのシステム。社員同士が仕事を褒め合ったり評価し合ったりすることでモチベーションを高める成果給のシステムです。
過去の自分のマネジメントを振り返ると、人に対して向き合えていなかったな、という反省があった。事業サイドの意見や要望を押し付け、メンバーが「なぜこの会社にいるか」という意義付けや目線合わせができていなかったんです。独りよがりのマネジメントでした。同様の課題を解決したいと思い、コミュニケーションプラットフォームづくりから始めました。

これを30~40名規模の会社さんにご利用いただくとフィットした。一方、1000名企業の会社さんに導入すると、経営トップや部長クラスの方々が「誰を褒めればいいのかわからない」と困っていることに気付いたんです。そこで「褒めるべき人」を見極めるためのアドオン機能をつくろう、と。

そこでまたUSの事例を調べたところ、Slackなどのコミュニケーションチャンネルのデータを解析して、人と人のつながりを可視化していくような技術――「オーガニゼーション・ネットワーク・アナリシス(ONA)」を知り、面白そうだと思って始めました。一方でONAだけでて適切なレコメンドを行えるわけではありません。勤怠データや評価データ、またその人の性格やキャリア目標などを総合的に鑑みて判断しなければなりません。では、それらのデータはどのように保管されているかというと、「データが分散している」という課題にぶつかり、データをまとめるために、現在の『BetterEngage』が生まれたというわけです。

竹下:石原さんはこれから、どんな世界を目指していくのでしょう?

石原:まず真ん中にデータベースがある。そこに採用・オンボーディング・評価・育成・エンゲージメント、さらにはイグジット・マネジメント(雇用の出口に関する計画・管理)やアルムナイ(退職者)管理まで、すべての人事施策に関し、人事や現場マネジャーがデータベースを活かしたアクションを取れるような世界です。

人事の皆さんは、経営と従業員の間で「反復横跳び」を続けてほしい。僕たちがデータ×アルゴリズムで意思決定のサポートツールを提供するので、人事は経営と従業員それぞれに向き合い、最適な決断をする。それによって会社の成長を促進できれば、ハッピーな世界がつくれると思っています。

竹下:貴社では「技術」「手法」ありきではなく、現場で使う人たちのリアルな声をベースに、目的をしっかり見据えて開発されているのを実感します。私たちも、プラットフォームを活用してHRの在り方をよりよく変えていけるように、一緒に取り組ませていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。

関連リンク
株式会社BtoA
BetterEngage

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インタビュー/竹下百里、文/青木典子、編集/高島優季、撮影/渡辺健太郎

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