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あなたの「もし・・・」が茨城の未来を変える! 茨城をフィールドに新規事業×地域課題解決 に外部人材が挑む「if design project」の舞台裏 ~前編「萌芽」~

2019.07.30

イフデザインアイキャッチ_compressed▲if design project

全国魅力度ランキング最下位⁉の茨城県が取り組んだ、超ユニークなプロジェクトが話題です。プロジェクトに参加したのは、東京圏で地方に関心があり様々なバックグラウンドを持つ受講生たち。
「つまらないから故郷を飛び出したけど、それなりの思い入れはある」「地域のために何かしたいけど、いまさら地元に友達もいない」「茨城県出身ではないけど、都会で培ったスキルが地方でどう活きるか試したい」…。そんな「1人では手を挙げにくいけど、何かしたい」といった人達が仲間と出会い、茨城と東京を行き来してフィールドワーク+講義+ワークショップを実践。生まれたアイデアを茨城のパートナー企業に提案するという、まったく新しい形の課題解決です。
気になるプロジェクトの舞台裏を、企画者たちに聞いてきました!


[if design project 茨城未来デザインプロジェクトとは?]
茨城県、株式会社リビタ、茨城移住計画が企画・運営する、実践型デザインプロジェクト。
日本を、茨城を、地域を良くしようと活動を続ける様々な地元企業のリアルな課題や茨城の魅力をフィールドワークを通して学び、様々なバックグラウンドを持つ受講生たちがチームとなって課題解決の企画提案を行う。

約3カ月間、茨城と東京で「“もし”自分たちだったら何をやるか」、「何ができるか」を企画・デザインする中で仲間達と深く地域に関わりながら、自らの今後の働き方や生き方を問い直すプロジェクトでもあります。

プロジェクト企画者
2
小森 学
茨城県 政策企画部 計画推進課 移住推進グループ 主任

3
樋口聡美
茨城県 政策企画部 計画推進課 移住推進担当 主事

4
増田亜斗夢
株式会社リビタ 資産活用事業本部 地域連携事業部 事業企画第2グループ兼施設運営グループ チーフコンサルタント

5
鈴木高祥
茨城移住計画所属 株式会社カゼグミ 代表 ファシリテーター

6
インタビュアー 森 啓亮
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチコンサルティングコンサルタント
平成28年度~平成30年度「茨城県トライアル移住・二地域居住推進事業」プロジェクト・マネージャー

地域の課題解決提案を通して「関係人口」を作りたい

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ワークスイッチコンサルティング 森啓亮(以下、森):
今回はif design project(イフ・デザイン・プロジェクト)の発足経緯から具体的な活動内容についてお伺いしたいと思います。
まずは皆様の自己紹介を、小森さんからお願いします。

茨城県 小森学(以下、小森):茨城県計画推進課の小森です。移住促進の事業を担当しています。

茨城県 樋口聡美(以下、樋口):同じく、樋口です。私も移住促進の事業を担当しておりまして、今年度からif design projectを担当させていただきます。

リビタ 増田亜斗夢(以下、増田):株式会社リビタの増田です。地域連携事業部という部署に所属しています。この部では「働く、学ぶ、集う、遊ぶ」をコンセプトにシェアスペースを企画・運営しておりまして、その担当をしています。茨城県の移住促進の事業にもプロジェクトマネージャーとして関わることになりました。

カゼグミ 鈴木高祥(以下、鈴木):株式会社カゼグミの鈴木です。弊社はワークショップの設計やファシリテーションが主な事業で、茨城移住計画の管理も担当しています、

森:ではさっそく、簡単にif design projectの概要をお話いただけますでしょうか。

増田:if design projectは、「東京圏から茨城県への新しい人の流れを作る」をコンセプトに、茨城県内の企業が抱える課題を解決する提案を3カ月のプログラムを通して行うプロジェクトです。
「東京圏の人」として想定しているのは、主に地方に関心を持つ都内のクリエイター層やITフリーランスの方々ですね。
基本的には移住促進の文脈になるので、産業振興というよりは課題解決提案というプロセスを通して、「関係人口を作る」というプロジェクトになります。

森:「関係人口」とは?

増田:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことです。

一方通行の魅力発信ではなく、県内外の人たちが課題解決に取り組むことで、地域の新たな魅力を浮き彫りにしたい

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森:そもそもは、「茨城県へ新しい人の流れを作っていきたい」という茨城県が持つ課題から始まったプロジェクトかと思いますが。

小森:そうですね。振り返ってみると、移住促進の事業が始まった数年前は、茨城県の暮らしやすさ、働きやすさみたいなものを東京圏の人たちに向けて一方的に発信するような事業が多かったように思います。ただ「他の地域でも同じような取組をしていましたし、何よりも、具体的な関わり方を創っていかないと選ばれる地域にはならないよね」という考えに至りました。
そこから、県内の企業や、さまざまなプロジェクトに取り組まれている、いわゆる地元の「キーマン」とされる方たちと何か一緒にプロジェクトを始めた方がいいんじゃないかという話になったんです。
そうしたざっくりした課題感から始まったかなと。

森:そこから増田さんや鈴木さんが加わったそうですが、何かこだわったことはありますか?

増田:茨城県は「魅力度ランキング最下位」(ブランド総合研究所発表「都道府県魅力度ランキング2018」)の県としてよく取り上げられるんですよね。でも、実は僕自身が茨城県龍ケ崎市の出身なのですが、県内の人も知らない魅力がたくさんあるんです。それを県外の人たちが実際に目にすることによって浮き彫りにできればいいな、と。そこで設定したテーマが「山」と「栗」と「スポーツ」の3つだったんです。

森:「山」と「スポーツ」に対して、「栗」がピンポイントですね(笑)。

増田:確かに(笑)。もう少し正確に言うと「食×地域」で設定したんです。実は茨城県は栗の生産量が日本一なのですが、県内でもあまり知られていないんですよ。栗に関わらず、「食」にまつわるもので実は生産量1位というものが茨城にはとても多い。そこでプロジェクトの受講生さんにはこの課題を通してより地域の魅力を発信してもらい、県内の人も新たな気付きを得ることで「あっ、いいじゃんこの地域」と、定期的に足を運んでもらう関係性ができることを心掛けました。
「山」「スポーツ」についても同様に「×地域」でテーマを設定しています。

キーワードは「わかりやすさ」と「継続性」。未来に、事業につながるプロジェクトを

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森:鈴木さんはいかがですか。

鈴木:「わかりやすさ」と「継続性」の2つが結構大事だなと思いました。今回のプロジェクトは、新しいアイデアを生み出すイベントである「アイデアソン」と「移住促進イベント」の2つの意味合いを持っています。
こういうイベントは、そもそも「これなら自分でもわかる」というテーマや企業を選定しないと参加率が上がらないので、誰が聞いても「ああ、なるほど」と思ってもらえるようなわかりやすさは重視しました。

森:「継続性」については。

鈴木:これもまた、こうしたアイデアソンとか実践型プロジェクトって、抽象的なプレゼンで終ってしまうケースが多いんです。でも、ちゃんと実現に向けて活動を継続したり、地元の方に引き継ぐところまで設計しないと、事業としてあまり意味を成さないんですよね。そこで、プロジェクトの座組自体に企業に入ってもらおうと考えたんです。
そのほか、銀行や地元で牽引役になってくれる人も座組に入ってもらいました。

森:受講生目線で見てわかりやすく、その裏側にちゃんと各企業や金融機関が絡んでいることで、アイデアを出すだけでは終わらないプロジェクトを設計されたということですね。

鈴木:そうですね。

森:「if design project」という名前に込めた思いについてはいかがでしょうか。

増田:最初から「茨城」を全面には出さないけれど、裏の意味には込められているような名前がいいな、とは思っていたんです。
いくつか案はありましたが、最終的に、「if」というところに「もし自分ならどうするか」というのと「茨城の未来」という2つの意味が込められることから、if design projectにしました。

「隠れた魅力」を課題として向き合うことで、外部目線を地域の活性化につなげたい

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森:いい名前ですね。では、実際にプロジェクトの内容に入っていけたらと思います。

増田:全体的なことから言えば、if design projectでは、受講生がパートナー企業の魅力や課題を汲み取り、事業企画・デザイン・プロモーション等、さまざまな切り口から企画し提案を行います。

「食×地域」では生産量日本一を誇る栗を扱いました。その中でも、笠間市は県内でも代表的な栗の産地なので、この「笠間の栗」を外部の目から見た上で、総合的なブランディング案を企画しました。パートナー企業に「あいきマロン」さんに、講師にはクリエイティブディレクター、アートディレクターの徳田祐司さんに入ってもらいました。

森:「山×地域」については。

増田:関東平野唯一の百名山である筑波山の裾野エリアも含め、居、職、住、遊、あらゆる観点から「観光によらない新たな人の誘引策」を企画しました。これまでにない層の人、あるいは企業を誘引し、二拠点や定住に繋がるストーリを考えます。パートナー企業には、筑波山神社近くにあるカフェ兼観光案内所「日升庵」さんに、講師には金子愛さん(株式会社R.projectにて新規事業/施設/プロジェクトの立ち上げ、採用、広報などを担う。2018年7月より執行役員)に入ってもらいました。

森:「スポーツ×地域」は。

増田:パートナー企業である水戸のプロサッカークラブ「水戸ホーリーホリック」は、年間865件という、サッカークラブのなかでも随一の地域貢献活動を行っています。その量だけでなく質も見直すことで、地域貢献活動の在り方や新たなファンづくりを企画しました。
講師にはAS,inc.代表の坂口 淳さん(日本サッカー協会スポーツマネジャーズカレッジ(SMC)ダイレクター。FC越後妻有ディレクター)に入ってもらいました。

森:受講生は具体的に何を行うのでしょう。

増田:基本的に月1回開催で3カ月のプログラムになります。
最初の「DAY1」では、3エリアに分かれて東京から県内にフィールドワークをしに行きます。
ただ、せっかく「茨城」とか「地方」というキーワードで何かしたいという人たちが集まる機会なので、チーム混在で懇親会もしました。

DAY2、DAY3はリビタが運営するシェア型複合施設「the C」で、アイデアソンや講師の方から企画の極意などをレクチャーしていただきました。
最後に「LODGE」というYahoo!JAPANのオフィス内に出来た日本最大級のコワーキングスペースで、プロジェクトの課題を提供してくれた企業の代表者に向けた公開プレゼンテーションを行いました。

森:月1回の開催の間に、各自でミーティングなども行っていたのですか。

増田:そうですね。平日の夜に「the C」に集まってミーティングをしたり、休日に自分たちで直接パートナー企業にアポイントを取って、現地視察を重ねるチームもありましたよ。

「1人ではやれないけど何かやりたい」。地方に対する等身大の思いを共有することでカタチにできる場所

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森:if design projectは参加費3万円とあえて有料にしています。その参加費のハードルをとっぱらってでも参加する心理についてはどう捉えていますか。

鈴木:そうですね、属性は3つぐらいかなと思っています。
まずは会社の中では経験できない地方創生に関わりたいといった人。
あとは茨城県出身とか、学生時代に茨城県で過ごしたというところから、もう1度茨城に関わってみたい人。
最後は…純粋にプロジェクトが面白そう、という動機だと思います。
座学だけでなく実際にフィールドワークにも行けて、パートナー企業ともつながっているという座組に興味を持った方も多かったんじゃないかと思います。

増田:茨城県出身の方に多かったのは「いつか茨城に戻りたい」という人ですね。ただ、今戻ってもあんまり面白くないから、今のうちに面白くしておきたいと(笑)。
あとは都内で培ってきたスキルが地方でどう活かせるのかを試してみたかった、という人も多かったようです。「スポーツ×地域」チームには純粋にサッカーが好きという人もいましたね。

鈴木:全体的な傾向としては、「自ら手を挙げないけど面白そうな何かがあれば乗っかりたい」というのがわかりやすい属性かと思います。

森:と、いいますと?

鈴木:どうしても地元のために何かやりたいのであれば、既に自ら何かしらのアクションを起こしているはずなんですよ。
そうではなくて、地元がつまんないから出てきちゃったけど、ちょっと思いはある。でも自ら地域のために手を挙げるかというと、「もう地元に友達いないしな」と考えてしまったり、地方創生の進め方や第一歩がわからない…。そういった思いを抱えている人たちが自分と同じ温度感の人と出会えるというのが、このプロジェクトの一番の特性かな、と。

森:なるほど。1人でやるほどではないけれど、思いはあるというような。

鈴木:思いはあるけれど、今は会社員だから行動へ移すのが難しい、というような感じですかね。

増田:あと魅力度ランキング最下位というところに興味を持った人もいました。「そうなんだ、逆におもしろいね」と。講師の徳田(祐司)さんもそこに食いついていましたね。

森:もっと人気を上げてやろうみたいなモチベーションだったんでしょうかね。

増田:未開拓地みたいな印象があるから、何かできるんじゃないかという感覚はあったと思います。

if design project 第2期募集はこちら
https://if-design-project.jp

インタビュー/森 啓亮、文/吉田知未、撮影/河野英喜(インタビュー)、編集/ランサーズ

後編「熱量」に続く。

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