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『気になる移住者』東京のweb業界から山形の農家へ。移住で手にした新たな価値観。

2017.12.22

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東北奥の奥ライターの「気になる移住者」インタビュー。
今回お話を伺ったのは、2013年に東京から山形へ移住し、「webディレクター」から「農家」に転身した中村雄季さん。ご夫婦で無農薬農場『いきものばたけ』を経営されています。
「収入が激減しても農家になりたかった理由」「どんな風にライフスタイルを変えたのか」などのお話は「職種を変えたい」「移住したい」でも、なかなか勇気が出ないという方の参考になるはず。
また、まったく新しい「夫婦の役割分担」に対する考え方もためになりますよ。

仕事の選択肢がたくさんある時代。だから思い切って転身できた。

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●中村さんは、山形に移住される前、東京でwebディレクターをされてたんですよね。キャリアはどれくらいだったんですか?

移住前にwebディレクターをしていた期間は約6年です。もともとは会社員としてwebディレクターをしていたんですが、キャリアを積んでからはフリーランスのwebディレクターになりました。

●東京のwebディレクターから、山形の農家への転身。キャリアチェンジの不安はありましたよね?

それはやっぱり、ありましたよ。仕事の内容も全然違いますし、環境も大都会から田舎に変わるわけですから。でも最悪、農家でやっていけなくても、webディレクターに戻る道もあるし、他の仕事に就くっていう道もある。そうフレキシブルに考えれば、そんなにすごい決断って感じではありませんでしたね。

●ここで失敗したら終わりだ~みたいな感じではなかったんですね。まずはチャレンジしてみようという。

そうですね。僕の主観かもしれませんが、今って恵まれている時代だと思うんですよ。選ばなければ、ぜいたく言わなければ、仕事っていくらでもありますからね。
それに、転職するのが当たり前にもなっています。単純な転職だけでなく、フリーランスやパート社員になった人がまた正社員に戻ったり、なんていうパターンもあります。
このような今の労働環境を考えれば、「どうにかなるかな」と考えることができました。

●そういう考え方だと、自分にプレッシャーがかかりませんね。移住先が山形県遊佐町だった理由は何かあるんですか?海沿いの酒田という町の隣ですね。

そうです。酒田は映画『おくりびと』の舞台になった美しい港町です。その隣の遊佐町は人口1万4千人くらいの農業が主体の町です。妻の実家が酒田にあって、正月や夏休みにちょくちょく遊びに来ていました。移住先は全国どこでもよかったんですけど、ご縁のあるところにしようかなくらいの感じでした。

●奥さんの実家は農家だったんですか?

いや、農家ではないです。だから、農業をしようにもゼロベースからだったんですよ。近隣に農業を教えてくれる会社があったんで、そこで研修生として9カ月間、カラダを動かしながら農業を学びました。その後、ご近所の農家でもう1年修行をしてから独立。自営で農業をやるようになって今年で2年目です。

“環境問題に取り組むため”に30歳の時、移住を決断。

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●収入の面だけなら、東京のwebディレクターの方が良いですよね。

可処分所得でいったら、間違いなく落ちましたね。移住して農業の研修生になった時の収入と、東京のwebディレクター時代の収入を比べると、3分の1とか4分の1くらいに減りました。落ちるのは覚悟していたので、そこはあまり辛くはなかったですね。

●そこまで収入が落ちても農家に転身したいと思ったのはなぜでしょう?

戦後はみんな食うだけで精いっぱいでしたよね。その後の高度成長期は、物質的に豊かになるのがテーマでした。でも今はありがたいことに、物質的な豊かさばかりを追いかけなくてもいい時代だと思うんです。
僕の場合は20代の半ばから、物質的な豊かさよりも、”環境問題や自然との共生”というテーマの比重が大きくなってきました。さらに、具体的に環境問題に取り組むなら「農業をするのが一番ではないか」と考えるようになったんですね。
農家に転身したことは、金銭面、物質面でいうとマイナスです。でも、山形に住んでいるからこそ、農業をしているからこそ、手に入る価値もあります。全てを手に入れることはできませんからね。何を捨てて、何を手に入れたいかは人それぞれでしょうね。

●手に入った価値として、「環境問題というテーマと向き合える」以外の価値もありましたか?

家族と一緒にいられる時間です。これは何にも代えることはできません。

●それは素晴らしい価値ですね!ただ現実面でいうと、収入が少なくなれば、お金を使わない生活に切り替えるしかありません。そのへんはどう調整したんですか?

山形に移住してからというよりも、東京にいた頃からライフスタイルを変えていました。「農業をしよう」と決めてからは、ムダ遣いをなくしたり、洋服をあまり買わなくなったり、お金を使わなくなっていましたね。それで、移住前に年収の2倍近くは貯蓄をしてました。移住後の山形に来てからでいえば、外食の回数が減ったので、さらに出費が減りましたね。

●移住前の貯畜もしっかりされていたんですね。中村さんは移住してから、webデザイナーと農家の兼業もされていますよね。これは収入減をカバーするためですか?

そうです。農業だけの収入だと心もとなかったので兼業の期間があってもいいのかなと。移住して1年くらいたった頃から、フリーランスのwebデザイナーもするようになりました。収入のだいたい半分はwebデザイナーでカバーする感じですね。でも、半年前(2017年4月)からは農家に専念しています。

●地方ってwebデザイナーが少ないので、引く手あまたですよね。それでも兼業という選択を断ち切ったんですね。

そうですね。実際にやってみて、山形でもwebデザイナーとしてやっていけそうだな、とイメージできました。でも、webデザイナーとの兼業だと、農業が中途半端になってしまいます。今は本当にやりたかった農業で精いっぱいやってみようと思っています。
そうはいっても、自分が農業で稼いだ金額を見て、webデザイナーの時はもっと稼げたのになーとたまに思ってしまうこともありますけどね笑。

夫婦間の役割を1週間ごとにスイッチ!新しい考え方で家事分担

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●先ほど”農家に転身したことで手に入る価値”として家族といる時間を挙げられましたね。実際、家族で過ごす時間は長いんですか?

僕の畑は自宅のすぐ隣にあります。通勤もないから、家族と過ごす時間はほんと多いですね。2歳の娘がいますが、朝も夜も毎日、一緒にご飯を食べています。妻も農家をしていますから常に一緒です。東京の会社員時代は、通勤時間が往復で約1時間かかってましたし、残業もかなりありました。そのままの状態だったら、今のように家族と長く過ごすのは難しかったでしょうね。

●奥さんとの家事分担はどんな感じでしょう?

1週間置きに「農家だけをやる人」「農家と子育てをする人」を交替しています。

●1週間ごとにスイッチ! 新しい考え方ですね。なぜ、そんな制度をとっているのですか?

具体的に内容を紹介しますと、1つ目の役割の「農家だけをやる人」は朝から晩まで農業に専念する人です。もう一方の「農家と子育てをする人」は、家事と育児中心でその合間に農家をする人です。この役割を1週間ごとに入れ替えていくスタイルです。まだカンペキには機能してないですけど、このスタイルを定着させようと夫婦で話し合っています。この制度をとることで、私も妻も農業を追究していけます。それによって、お互いに農業に対する意見を出し合えるようになるので、進歩がかなり速くなると思っています。

●すごく面白い考え方ですね!最後に、移住を考えてる方、農業をしたい方へのアドバイスをお願いします。

アドバイスというのはおこがましいので……私自身の今後の方向性についてお話ししますね。私は、なるべく土日は休んで余暇を楽しむようにしています。ただ勘違いしていただきたくないのは、”農家だから、地方だから、ゆったりした生活”が送れる訳ではないという点です。収入重視の農家さんは、休日もない、昼ゴハンを食べるヒマもない、睡眠時間も削るというような生活です。正直、農家ってこんなに忙しいのか!と驚きました。

もしかしたら、そんなやり方なら東京時代に近い、あるいはそれ以上の収入が得られるのかもしれません。でも、僕にはそれはフィットしませんね。まずは、東京時代の7割の収入を目標にして、余暇や家族と過ごす時間を大事にしていきたいですね。

あとリアルなところで言うと、さきほど職住が近いメリットをお話しましたが、別の見方をすると職住が近すぎて刺激がないというデメリットにもなります笑。今週も先週も(平日は)保育園に子どもを送り迎えする時以外、自宅の敷地と畑にずっといました。僕もそうなんですが、人と会ってその刺激でエネルギーを得ていくタイプには辛い面もあります。そのへんをイメージして、移住や農業にチャレンジした方が良いでしょうね。

●中村さんのお話を伺っていると、移住をする方は「何が本当にしたいのか」「何を大切にしたいのか」の軸をしっかり持った方が良いということが分かります。そうでないと「何のために移住したのか!」となってしまいます。私自身、移住してまだ2年、まだまだ迷いが多いので参考になりました。ありがとうございました。

中村さんご夫妻の無農薬の農場『いきものばたけ』Facebookページ
https://www.facebook.com/ikimonobatake/

info

東北奥の奥ライター 
自己紹介文面:東京都渋谷区の編集会社『アスラン編集スタジオ』の正社員ライターを経て、2015年、秋田県湯沢市にUターン。現在は、フリーランスライター。”クラウドソーシング&テレワーク”を活用して、田舎にいながら東京の仕事のみで生計を立てている。

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