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スイッチコラム

なぜ『1分で話せ』がビジネスパーソン必須のスキルなのか? 著者・伊藤羊一さんに、今日からすぐに実行できる「極意」を聞く!

2019.04.09

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▲「1分で話せ」著者 伊藤羊一さん

孫正義も認めた「伝え方」の達人・伊藤羊一さん。著書の『1分で話せ』は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019」で「ビジネス実務部門」グランプリに輝きました。本書では「伝えたい事」を相手に「理解」してもらい、実際に「動いてもらう」事をゴールに設定した様々なメソッドが学べます。ワークスイッチ編集部では著者の伊藤羊一さんから、「伝え方」のコツを徹底的に聞いてきました。本を読んだ方も読んでいない方も目からウロコのインタビュー。「プレゼン」や「伝え方」に悩んでいるビジネスパーソンのみなさま、必読です!


伊藤 羊一(いとう よういち)
ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト
Yahoo!アカデミア 学長/株式会社ウェイウェイ 代表取締役
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月にヤフーへ。企業内大学Yahoo!アカデミアの学長としてヤフーグループを中心とする次世代リーダー育成を行う。また、株式会社ウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授として、ヤフー以外でも様々な活動に従事する。近著「1分で話せ」は26万部を超えるヒットに。

「伝える」ための最強メソッド=「結論」+「根拠」+「たとえば」で、相手の右脳と左脳を動かせ!

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▲「1分で話せ」(SBクリエイティブ・刊)。現在、26万部を超える大ヒット!

——まずは本のタイトルにちなみ、単刀直入にこの書籍の本質をお伺いできますでしょうか。

伊藤羊一さん(以下、伊藤):端的に言うなら、本のオビがすべてです。「結論」と「根拠」と「たとえば」で、相手の右脳と左脳を動かす。

——1分かかりませんでした(笑)。

伊藤:ははは(笑)。でも僕は本来話が長いので、まずはこの本質を伝えておいて。ここからその理由を解説しましょう。

——お願いします!

伊藤:「結論」と「根拠」を話す人は結構いるんですが、実はそれだとイメージが湧いてこないんです。そこで「たとえば」と言って具体的な事例を示すことで、相手の右脳にイメージを湧かせるんです。
じゃあイメージの何が重要かというと、「あの牛丼屋さんは早くて安くてうまいから最高だ」と話しても、相手は「へ〜」と理解(=左脳を刺激)はしても、共感や「おお〜!」というワクワク(=右脳を刺激)は生まれません。
ところが、「注文してから牛丼が出てくるまで平均10秒です」とか「牛丼一杯380円です」という「たとえば」を出すとイメージがしやすくなり、「いつも行くレストランより早い! あの牛丼屋さんっていいね」となるわけです。

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▲イメージを伝えて、相手に想像してもらう

人間って、理解するだけでなく「おお〜!」と思わないと動かない。そのためには左脳と右脳の両方を満たすこと。これが、この本の本質そのものです。

注意を「引く」だけでなく「迷子にさせない」工夫が、相手への伝わり方を劇的に変える

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▲これから本書に書かなかったことを、お話ししましょう

——「1分で話せ」を読んで、伊藤さんの提唱する技術は「AIDMA」と共通するところもあるんじゃないかと思ったのですが…。
※AIDMA(アイドマ)・・・Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字をとったもの。1920年代にサミュエル・ローランド・ホールが「広告宣伝に対する消費者の心理的なプロセス」として発表した

伊藤:はい。「AIDMA」という言葉自体を説明するのが大変なので、本書「1分で話せ」ではあえて触れていませんが、実はその通りです。

——それでは、伊藤さん流の「伝え方」のポイントを、AIDMAに照らし合わせて解説いただけますか?

伊藤:はい。まず、Attention(アテンション/注意)ですね。
ちなみに、一瞬だけ注目してもらえばいいのなら大きな声を出したりすればいいわけです。でも、プレゼンなどの場では注目し続けてもらわないといけません。なので「迷子にさせない」ことが必要で、そのためのポイントは「スッキリ・カンタン」であることです。

スッキリとは、要は言葉を短くすること。それこそ「1分」で話したり、余計なことは言わないようにしましょう、ということです。
カンタンとは「中学生でもわかる言葉を使う」ことです。これはテレビ局の方から教わったことなのですが、たとえビジネス番組でも難しい言葉を使うと視聴者は「何を言っているかわからない」と、すぐにチャンネルを変えてしまうそうなのです。
それ以来、僕もこのアドバイスを自分のプレゼンに適用しています。
この「スッキリ・カンタン」を徹底したことで、僕のプレゼンの評価はいきなり上がりました。

◉Attention(注意)を引き続けるポイント
=スッキリ・カンタンであること

関心を高めることで欲求が湧いてくる。AIDMAにおけるインタレストとデザイアはセットの関係

——続いてはInterest(インタレスト/関心)です。

伊藤:Interest(インタレスト)というのは、左脳で興味・関心を持ってもらうことです。
たとえば(眼の前にあるインタビュー用のICボイスレコーダーを指さして)「これは最高ですよ。なぜなら軽くて、何時間も録音できて、USBポートも使えて」…と説明していくと、相手は「ほう、ほう」と理解します。こうした具体的な「根拠」を提示し、「ほう」という小さな「YES」を繰り返していくことで、相手の関心を高めていきましょう。

◉Interest(関心)を高めるポイント
=ロジカルな説明で相手の小さな「YES」を繰り返し引き出すこと

——関心を高めることで、次のDesire(デザイア/欲求)にいたるわけですね。

伊藤:はい。ただDesire(デザイア)というのは、話を聞きながら「へー」とか「ほう」とか相手に「食いついている」ようなイメージではなく、「あぁ〜」と目を閉じて天を仰いでいるような状態のことだと思うんです。すると、さっきの「イメージ」が大事になる。
よく商品紹介動画ってありますが、あれを観ると「そうやって使うんだ!」というイメージが湧き、その想像が人をワクワクさせます。この状態こそが「デザイア」が高まっている状態だと僕は思うんです。

まあ、ICボイスレコーダーはスペックの説明と使用感が結構近いと思いますが(笑)、これがクルマになると「タイヤの太さがこれぐらいで、エンジンがこうなっていて、ステアリングが…」といわれても「へえ」という感じでしょう。でも、コーナーをキュキュキュキュッと回っているような動画を見せられたらどうでしょう。
「俺がこれに乗って、いろは坂を走ったら…」と想像し始めて「おお〜!」となりますよね。こうなったらもう無限。こちらの話を超えて、聞き手の頭の中は想像が勝手にぐるぐる回り始めます。

◉Desire(欲求)を高めるポイント
=相手にイメージを描いてもらうよう促す

孫正義社長の記憶にも残った、「キーワード」の持つチカラ

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▲“メモリー”を急に忘れちゃう人が、多いんですよ

——ここまで来たら、相手を動かす寸前まで来ているような気がします!

伊藤:ところが次のMemory(メモリー/記憶)になると、「あれ? Mってなんだっけ?」と急に忘れちゃっている人が多くなるんです。

——“メモリー”を忘れちゃうんですね(笑)。

伊藤:そうです。みんな「説明すればいい」と思ってしまって、「覚えてもらうこと」の重要性自体をあまり認識していないんですよね。
でも人は相手の話なんてそんなに聞いていませんので、べらべら説明だけしても「なんかいいこと言ってたね」で終わりになってしまう。
そこで、「これだけ覚えて帰って下さい」と、内容を包み込めるような「ひと言」のキーワードを用意しておく必要が出てくるんです。

僕がその重要性に気づいたのは、孫正義さんの前でプレゼンをしたときです。
それは、Eコマースの新規事業についてのプレゼンでした。お届けが今日明日じゃなくても、「一週間くらいしたらお届けします」と曖昧にせず「○月○日にお届けします」と納期を明確にできていれば、受注率は上がる、というEコマース戦略の提案だったのですが、その際に「指定した日にきっちり来るから『キチリクルン』です」と言いました。
その後30人ぐらいがプレゼンをしたんですが、孫さんがあとから「君の『キチリクルン』、面白かったね〜」と声をかけてきてくれたんです。このキーワードがなかったら、おそらく声をかけてもらうことはなかったでしょう。

◉Memory(記憶)してもらうポイント
=ひと言で言い表せるキーワードを用意する

A→I→D→Mの後は「情熱」と「自信」。そこまでやって最後のA(行動)へとつながる

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▲人を動かすために大事なことは「情熱」と「自信」です

——そして、ようやくAction(行動)に至ると。

伊藤:いえ、実は僕の考えではその前にもうひと工夫が必要なんです。
それはデザイアで右脳を刺激するのとはまた別の、「この人の言っていることは良さそうだ」という感情。これが揺さぶられないと、人は最終的に動いてくれないのです。
僕は最初それを「気合」と呼んでいたんですけれども、「理屈じゃなくて気合だ」と言ってしまうと「今まで聞いたのはなんだったんですか」となっちゃうんですよね(笑)。

——確かにそうですね(笑)。

伊藤:そこで今は「情熱」と「自信」だと言い換えています。
じゃあ情熱って何かというと、ある人は「昨日行ったイタ飯がめっちゃうまかった」とか、ある人は「イチローの引退会見がすごかった」とか。僕であれば若い頃からQUEENが1番好きなバンドだったので、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の話をしたら止まりません。要は好きなことだといくらでも話せる。それが「情熱」です。

——確かに、好きなことの話をすると盛り上がりますね。

伊藤:でしょう。ちなみに普通は年齢を重ねると声量が落ちるものですが、僕は人前でお話する機会がとても増えたので、喉が鍛えられて、原曲のキーでQUEENを歌えるようになりました! …と、そんなエピソードをいくらでも話せるわけです(笑)。

——(笑)。いっぽうビジネスにおいては、好きなことばかりには携われません。そんなときには、どうやって情熱を持ったらいいでしょうか。

伊藤:確かに、仕事をしているとそういう場面は少なくありません。「あー、これはやりたくはないけど、やらざるを得ないよな」っていうね。でも「上司が言うから」とイヤイヤやるより何か面白そうなところを探し、当事者意識を持てるよう努力することをおすすめします。そうでないと周りの人も動いてくれませんからね。
あとは、最初は好きじゃなくても続けていく内にプロフェッショナルになってそこから好きになっていくこともありますので、僕なんかは新人に「まあちょっとやってみようよ」と言っています。

口が勝手に動くほど練習することで、全体を俯瞰するだけの余裕(自信)が生まれる

——ではもう一つの自信のほうは?

伊藤:僕は(前述した)「キチリクルン」のプレゼンの際に、300回ぐらい練習したんです。するとどうなるかというと、本番でめちゃくちゃ緊張はするものの、口が勝手に動くようになっていたんです。
そのおかげで全体を俯瞰する余裕もでき、あらかじめ「ここで言うぞ」と思っていたギャグのタイミングを、当日の空気感に合わせて少し変えるという臨機応変な判断が可能になりました。実際、見事にウケましたよ(笑)。
うまく話すために練習するのは最低限のことであって、徹底的に練習や準備をすると他のことを考える状態にまで自分を持っていけるんです。それがつまり「自信」だと思います。

キャパオーバーは悪循環しか招かない。自分の人生は自分でコントロールしよう

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▲自分のキャパシティに、相手をアジャストさせよう

——なるほど。いっぽう忙しいビジネスパーソンは「量」との戦いもあると思います。かくいう記者も一時期、多いときは毎週企画会議で8本出さなければならず、それがすごく苦手でした(笑)。ひねり出すのに精一杯で、情熱も自信も持てなくて…。こうした「悪い癖」がついてしまった人はどう対処したらいいでしょう。

伊藤:それはもう、自分の人生ではなく他人の人生を生きちゃっている状態なんですよね。なので、たとえば(8本のうち)2本の企画ならなんとかエネルギーを保てるというのなら、「自分は2本しかできない人だ」ということにアジャストさせていくしかないと思います。

ただいきなりそれじゃあ怒られちゃうから、6本は「いやー、いま出てきそうなんですけど、いまあれですね、うーん」とかなんとか言って。そのかわり、2本は「お前冴えてるな!」と周りが驚くようなテンションでやる。
そのうち、「どうも自分は週2本ぐらいだといいものができるような気がするんですけど」と言えばいいんです。その2本がきっちり出せるようになれば、きっと言えるようになりますよ。

自分のキャパを超えるとろくな事はありませんし、そのキャパは人それぞれです。僕自身、いまでもときどきいっぱいいっぱいになることがあります。そうなったら「ちょっと休みます」などと言って、頭を休めますからね。

——(笑)。自分の人生を生きると言うのはすごく素敵な言葉です!

伊藤:自分の人生を生きるにはやりたいことをやるというのが究極の姿なのですが、その前に自分の人生をコントロールすることが大切なんです。
もちろん、そこから少しずつハードルを上げていかないと人は成長しませんが、自分のキャパシティ以上の事をやり続けたらパンクしてしまうし、パンクしたらどんどんタスクが溜まって、悪循環になってしまいますからね。

◉「情熱」と「自信」を高めるポイント
=対象を好きになるよう、とにかくやってみる。そして、体が「それ」を覚えるぐらい、回数を積み重ねること(ただしキャパは超えすぎない!)

実は「話しベタ」だった20代。「伝え方」を身につけて人生が変わった

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▲僕もちょっとずつ人と話す技術を身につけていったんです

——とても勉強になりました。ところで伊藤さんご自身は、伝え方の技術を身に付けたことで何か変わりましたか?

伊藤:それはもう大違いですよ。僕ね、もともとはあまり話すのが得意じゃなかったんです。20代の頃はメンタルをやられて働けなくなったこともありましたし、その後も喋るのが得意じゃなかったので、資料を一生懸命作るようにしました。
でも、やっぱり右脳にも訴えかけないとダメだよなというときが来たんです。そうなると必然的に口頭でのコミュニケーションが不可欠になっていって、ちょっとずつ人と話す技術を身につけていったのです。

そしていま改めて昔の自分と比べてみると、人との距離は相当縮まっていますね。それから「本当はこういうことが言いたいのに言葉にならない」というモヤモヤも減って、感情も落ち着く。当然のことながら仕事もうまくいくようになりました。
さっき「自分の人生を生きなきゃ」という話をしましたが、同時に人は共同体の一員でもあるわけです。そして、ある一定レベル以上の会話ができていないと、チームはうまくいかないというのが、僕の考えです。

人って、基本的に「この人と喋っていいんだ」という関係値がないと進まないんですよね。なので、プレゼンに悩んでいるという人はひとまず周囲といっぱい喋って、関係値を探っていく努力も続けてほしいですね。

——プレゼンで簡潔に話すためにも、普段からのコミュニケーションは密に取ることが重要なんですね。今日はありがとうございました。

取材・文/吉田知未、撮影/千々岩友美、編集プロデュース/藤田薫(ランサーズ)

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