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スイッチコラム

マミートラック、三者三様の選択~それぞれのメリット・デメリット

2018.01.12

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「産休・育休が取得できずに仕事を辞めた…」そんな声を聞くことはずいぶん少なくなってきたここ数年。新たに聞かれるようになった、働くママの悩みを表す「マミートラック」という言葉をご存知ですか?目の前のことに追われがちな出産後の働き方について、先輩たちそれぞれのケースをご紹介します。

マミートラックってなに?

子育てをしながら働くなかで「残業ができない」「転勤ができない」といった制約のために、男性と比べて責任ある仕事を任されなかったり、昇進・昇格等が不利になる女性のキャリアコースのことです。
永遠に抜け出せないトラックのなかをぐるぐると走らされ続けている気がする…と悩む女性のキャリアを表して言うことが多いのですが、実は、この言葉が生まれたのは1988年。その当時は、「子育てと仕事を両立するために、労働時間や労働量などに配慮した、働く母親のためのキャリア・コース」という前向きな意味でした。
女性の社会進出が「当たり前」になり、男女平等でずっと教育を受けてきた世代が責任ある仕事を担うようになってきた今、マミートラックを走る女性たちの思いはより複雑さを増してきています。
マミートラックにまったく違う気持ちで向き合ってきた3人の先輩たちの体験談をご紹介します。

「マミートラックの何が悪いの?」

はじめにご紹介するのは、会社の用意してくれたマミートラックを「望んで走った人」のケース。それでもマミートラックのデメリットについて、悩みはあったようです。

法定以上の最高3年間の育児休暇、子どもが小学校6年生まで続けられる時短勤務、社内保育所…学生のころから、「将来は育児と仕事を両立するために、子育て支援が充実した会社を選ぼう」と考えていました。
他の会社で育児をしながら働いている友人たちと比較しても、とても充実した制度だと思っています。
制度以外にも、出張や残業の免除に急な有給申請をしてもいつでもOKをもらえるなど、本当に働きやすい環境だなって思っています。
主人は相変わらず激務なので、子育ての中心はやっぱり私になっちゃいますし、女性が働きやすいのって大切ですよね?
とは言え、「育休を1年もとったら、営業ワンシーズン抜けなきゃいけないんだから、半年で復帰したらいいじゃない」
って同僚にススメられたり、「2時間の時短勤務にすると、給与は25%カットになるし、バックオフィスに異動したら営業手当がカットになるし、賞与の査定も最低ランクだけでしょ?残業代もないし…年収200万はダウンしちゃうんじゃない?」なんて。
最近、生涯年収で考えたら2000万円くらいのマイナスになっちゃうのかも…?と先輩に言われて、さすがにちょっと落ち込みました。
私にとっては、お金やキャリアよりも子育ての時間をゆったりとることが大切だったからミートラックはとてもありがたかったです。でも、客観的に見ると、このマイナスって大きいですよね。

<Aさん・30歳。食品商社入社8年目。営業職から育休明けに営業事務職へ異動。2年の育休後、時短勤務1年目>

「マミートラック、早めに抜けたいなって思ってます」

二人目は、マミートラックを「走らざるをえなかった人」のケースです。子育てと仕事の両立は大変、という話ばかりをよく聞きますが、個人差も大きいのが実際のところ。至れり尽くせりの子育て支援に過剰感を感じることもあるようで…。

産後のマイナートラブルもなく、「一日中家で子どもと二人きりなんて、つまらない。
誰にでも愛想がよくて、病気もあまりしない元気な子だから、育児休暇なんて半年でいいな」って思いました。
近所の保育所も0才児なら待機無しで入れる空きがあることがわかったので、産休から育休に切り替わるタイミングで「すぐ復帰できます」って上司へメールしたんです。
そうしたら、「まだ焦らなくてもいいよ。半年を過ぎて、子どもも寝ているだけじゃなくなってくるころからが大変なんだから!予定通り、来年の4月復帰に合わせて待ってるからね!」ってさらりと対応されてしまいました。
もともと、子育てに理解のある会社です。男性でも積極的に育児休暇をとることを推奨されているし、育児休暇も2歳までとってもいい。
親切で言ってくれているというのはわかるから、それ以上は反論できませんでした。
結局、当初の予定通り子どもが保育園に通い出す4月のタイミングで復帰、同じ支社のバックオフィスに異動になりました。
時短勤務やバックオフィスへの異動は、仕事と子育てを両立してもらうための「会社の配慮」だったはずなのに、
その配慮が重く感じるなんて、贅沢なのかもしれませんね。
実際にその制度のおかげで、子どもと過ごす時間がしっかり確保できているわけですから。
バックオフィスへの異動も、「やりがいを感じられないかも…」という漠然とした不安がありましたが、新卒から10年勤めている会社なので、異動先にもこれまで仲良くしてもらっていた先輩や後輩がたくさんいます。
人間関係に恵まれていることもあって、新しい仕事に挑戦している、って前向きに考えることもできています。
給与減に関してはもう割り切るしかないなと。そのかわり、はやく帰宅して空いた時間で資格取得の勉強をはじめました。
合格率10%以下の狭き門の試験なんですが、コレを持っていると社内で手当が15,000円つく資格なので、合格したら時短勤務中の給与減を少しはリカバリーできるかな、って期待しています。
それから、資格を取ったあと、仕事に直接役立つ他部門に異動願いを出して、マミートラックを早く抜け出せるように狙っているのもあるんですけれども、ココは今の上司には内緒ですね!

<Bさん・34歳。不動産管理会社入社12年目。育児休暇明け半年で、元の部署で時短勤務中>

「私はマミートラックを走るつもりはありません」

最後は、あらかじめマミートラックには「一切入らないと決めていた人」のケースです。なかには妊娠・出産のタイミングから、事前に入念な準備を重ねていた人も。

第一子の出産が32歳、第二子の出産が33歳でした。
子どもは2人ほしかったけど、仕事を離れる期間はできるだけ短くしたかったので、第一子の育休中に、妊娠、年子で2人目を産みました。
二人目の育休は半年だけです。ちょうど4月のタイミングで、二人とも同じ保育園に入れることができました。
子どもをつくる、ってこんなに思い通りに行く人ばかりではないと思うけれど、
自然に任せるだけじゃ、「私は仕事復帰したら、時短勤務をするつもりもないし、異動をするつもりもない」っていう意志を伝えられなかったと思っています。
子どもができる前から、「子どもができても、第一線でずっと仕事をしたい」って上司や同僚に言い続けていました。
マミートラック、の反対の言葉って知っていますか?
「ファスト・トラック(出世コース)」って言うんですって。
「どっちにしろトラックでぐるぐる走るのは一緒なんだ」ってちょっと笑っちゃいましたけど、どうせ走るなら、私はもっと速く走りたい。
ファスト・トラックを走るために、犠牲にしたものもそれなりにたくさんあるんですよ。
通勤時間の短いマンションは4人家族で55㎡の狭さだし、保育料は毎月12万円で、病気のときはシッターさんを手配して、家政婦さんを週に2日お願いして…と、
今はほとんど貯金もできない。人によっては「何のために仕事しているの?」なんて言われちゃうかもしれませんね。
それでも、30代で仕事を手放さなかったから、40代の今、男性同期と変わらないタイミングで管理職にもなりました。
子どもには、いつか「お母さんカッコいいね」って言ってもらえたらうれしいです。

<Bさん・40歳。ソフトウエア会社入社18年目。育児休暇を6ヶ月で切り上げ、現在小1の第2子の育休復帰後7年目。>

まとめ 

「育休明けのリアル」は、人によって違う。頭ではそう理解していても、当事者である働くママさん以外の、周囲の人たちには意外と伝わらないものです。
「ママになったんだから、いつでも家庭を優先したいよね」
「時短勤務の人に会議参加を要請したら悪いかな?」
そんな善意で用意されたマミートラックを「走る」のか「抜ける」のか「入らない」のか、自分の意思を周囲に伝える機会を意識してもつことが必要です。
子育てをしながら、どのコースを走ることになったとしても、上司や同僚、家族、保育者などの「伴走者」を頼って、自分なりのペース配分を意識するのが「完走」のコツ。ペースメーカーのスピードを決めるのはあなた自身です。

沼田絵美
2000年卒。在学時就職サークルを立ち上げ、就職サイト運営会社に企画営業として就職。東名阪で採用支援に計10年携わった後、大学キャリアセンター相談業務を担当するキャリアコンサルタント、就職関連ライターとして独立。標準レベルキャリアコンサルタント(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)資格所持。

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