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ビジネスパーソンでも実践できる、デジタル時代における人間中心の「マーケティング4.0」

2017.10.06

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アメリカの経営学者、フィリップ・コトラーが提唱した「マーケティング4.0」。そこにはデジタル時代の現在において、人々はどのように考え、どのように行動思考をするのか?という回答が記されています。ビジネスパーソンが「マーケティング4.0」を知ることは、今後の進むべき方向の指針となるはずです。

製品を売る時代から共感してもらう時代へ

アメリカの経営学者、フィリップ・コトラーは、86歳と高齢なのにもかかわらず、今も変わらずマーケティングの世界で第一線の活躍をしています。
そのコトラーの著書『コトラーのマーケティング4.0 ~スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)が2017年8月に、ようやく日本でも刊行されました。ようやくというのは、この『コトラーのマーケティング4.0』は先にアメリカで2016年に刊行された書籍の翻訳だから。日本でも一部の知識人の間で話題沸騰となっていた「マーケティング4.0」の全貌が、一般人でも理解できるようになったということです。

世界中で旋風を巻き起こした「マーケティング4.0」とは、一言で表すと「人間中心のマーケティング」の進化系を指します。

マーケティングとは、企業が製品やサービスなどを顧客に流通させるための体系的市場活動を言います。『コトラーのマーケティング4.0』は、製品やサービスなどを顧客に流通させるための業務を担当しているマーケッターや営業マンなどに向けたマーケティングの専門書です。

「マーケティング4.0」はそんなマーケッターや営業マンだけでなく、一般のビジネスパーソンにとっても参考になる、「”縦”から”横”へ思考する重要性」「人間と人間の触れ合いがより求められていく時代での対処法」「『ワォ!』と驚くような喜びと経験とエンゲージメントの大切さ」などが、記されています。

それらを理解し、思考を変革させ、実践することによりビジネスにより大きな結果をもたらせるようになるはずです。

まず最初に、「マーケティング4.0」というからには1.0から3.0が存在するわけで、それを簡単に説明します。

マーケティング1.0とは「生産主導のマーケティング」を言います。今ある製品をどう売るか?というマーケティングです。製品を作ってから「どうやれば売れるか?」を後で考えるという、とても原始的な考え方です。

マーケティング2.0とは、「顧客中心のマーケティング」を言います。製品をどう売るか?ではなく、顧客が欲しいと思う製品を作って売る、というマーケティングです。マーケティング1.0より少し進んだものだといえます。製品をただ作るのではなく、リサーチし顧客のニーズを把握してから製品を作る方がいい、という考え方です。

多くの企業にとってのマーケティングは、1.0や2.0の状態、といえるのではないでしょうか。

続けてマーケティング3.0とは、「人間中心のマーケティング」を言います。これは少し難解ですが、「人間的価値を支持し、表現する製品・サービスや企業文化を生み出すマーケティング」といえます。つまり、製品を売る、ということよりも、製品・サービスや企業文化に「共感」してもらうことが重要、というマーケティングです。
例えば、シャネルやルイ・ヴィトンのような一流ブランドは、価格や機能といった価値で購入してもらうのではなく、ブランドそのものに対する憧れやシンパシーを価値として提供し、その価値に「共感」してもらい、それに対価を払ってもらっているという考え方です。

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そして、マーケティング4.0は、このマーケティング3.0の進化系です。

まず、現在の状況を見ていきましょう。

“縦”から”横”へ。世界中の人が「つながる」時代

『コトラーのマーケティング4.0』に「スマートフォン時代の究極法則」と副題が付いているように、現在はスマートフォンに代表されるインターネットやSNSの時代です。

インターネットが起こした現在のグローバリゼーションは、誰にとっても平等な世界を生みました。創業間もない小規模なベンチャー企業でも、アイディアが優れてさえいれば、伝統ある大手グローバル企業と競争することもできます。例えば、大手企業でしか開発できなかった自動車や飛行機も、今ではベンチャー企業がモビリティや小型のライトプレーンを開発しています。また、下町の工場がロケットの重要な部品を製作したり、民間のベンチャー企業であるインターステラテクノロジズ社(北海道)がロケットを打ち上げる時代です。ある分野に特化した優秀な技術を持つ無名のベンチャー企業は多く存在し、今後、さらに増えていくことでしょう。

また、一時期、M&Aがもてはやされていましたが、今は企業を買収するのではなく、パートナーとなり「共創」する方が高い競争力を保持できると考えられています。
例えば、企業同士ではありませんが、マクドナルドは「とんかつマックバーガー」に合ったソースを生活者と共に試作したり、キリンは神奈川(横浜)の若者とビールを作る「はまっ子ビール」プロジェクトなどの取り組みを行っています。

これは、かつて企業から市場へと”縦”に進んでいた流れが、今では”横”になっていることが理由だとコトラーは指摘します。

「イノベーションは社内で生まれるべき」と考え、“縦”である研究機関を社内に備えていた企業も「それは間違っている」と気付き、アイディアを“横”である外部から募るようになりました。マクドナルドやキリンの取り組みはまさにそうした事例だと言えるでしょう。

さらに、顧客の信用も“横”へと変化しています。かつて顧客は“縦”である権威者や専門家の助言を聞いていましたが、今では友達や家族、さらにはFacebook、TwitterといったSNSによる“横”の情報を信用するようになっています。

つまりデジタルの世界で人々はハイタッチ(人間的な触れ合い)を強く求めるようになる、ということです。企業からの一方的な情報より友達や家族や、SNSでつながっている人々を信用するのです。

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また、近いうちに地球上のあらゆる人が互いにつながるようになる、という指摘もあります。顧客はFacebook、Twitterのレビューで製品の購入を検討するようになりました。つまり、顧客は社会の意見にまず従うことになる、ということです。個人から社会のつながりが重要視されていきます。

人間と人間の触れ合いがより求められていく

では、そんな時代のマーケティング4.0とは?「人間中心のマーケティング」の進化系とは?具体的にどのようなものなのでしょうか。

コトラーはオンラインとオフラインの交流を一体化させる必要があると言います。デジタル経済では、「オフライン」の交流だけだと不十分で、「オンライン」上での「触れ合い」が強力な差別化要因になる、とします。また、ブランドの本物の個性がかつてないほど重要になってくる。ますます透明性が高まる世界ではオーセンティシティ(真正性)が最も重要な資産になる、と唱えています。

そして、「人間と人間の触れ合い」を利用して顧客エンゲージメントを強化すべき、と結びます。つまり、ネットの世界を通して人はリアルな世界を求めるというのです。ネットがバーチャルではなくリアルになっている、と言えるかもしれません。

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そんな時代において、製品やサービスなどを売るには、従来の製品、価格、流通、プロモーションといった要素だけでなく、製品のサービスなどが生まれる前のコンセプトを作る初期の段階から顧客を巻き込む「共創」が大切だと言います。

それで思い出すのは、クラウドファンディングです。クラウドファンディングでは製品やサービスが生まれる前のコンセプトをプレゼンテーションして支持者を集め、資金調達します。そこにも支持者への特典という「人間と人間の触れ合い」が存在します。

また、人々は製品やサービスに共感するのではなく、企業そのものに共感することもあります。
例えば、「レッドブル、翼をさずける」というキャッチコピーで有名なエナジードリンク、レッドブルは単なる飲料ではなく「エキサイティングな体験」をコンセプトにすることで共感を得ています。同様にメルセデス・ベンツも自動車の価値よりもメルセデス・ベンツの自動車を保有することによる「自己実現」をコンセプトとし、支持されています。
もちろん、レッドブルもメルセデス・ベンツもコトラーがマーケティング4.0を提唱したからコンセプトを設定したのではありません。共に提唱される以前からマーケティング4.0を実践していたのです。

価格や流通、プロモーションの在り方も変化しています。例えば、Twitterでプロモーションをする企業は多いですが、従来の一方的に情報を発信する、というスタイルではなく、顧客とのコミュニケーションが重要となっています。例えばタニタやSHARPは一方的に情報を発信するのではなく、ユーザーのツイートに対しても丁寧にフォローしています。

マーケティング4.0は「人間中心のマーケティング」の進化系とあるように、人に寄り添う考え方です。利益のみの追求を見直すべき時代だと言えるでしょう。

「ワォ!」と驚くような喜びと経験とエンゲージメント

このように、マーケティング4.0の世界になると「人間中心」がより高まります。

なぜなら、これからの未来、人工知能やロボット、自動運転が加速化すると、人間の仕事はロボットが代行し、それによって人間は不安となり、自分のアイデンティティを求めるようになるからです。「デジタルの世界で人間である、ということはどういうことか?」を考えるようになります。

そのように「人間」がよりクローズアップされると、「人間的性格」を持つ製品やサービスなどが価値あるものとなります。「人間的性格」とは、「身体的魅力」「知性」「社交性」「感情性」「パーソナビリティ」「道徳性」といったものです。まさに人間そのものです。

そして、『コトラーのマーケティング4.0』では、最後に「ワォ!」を生み出すことが重要とあります。その例として、ドーナツ店のクリスピー・クリームでの出来事が挙げられています。
ある起業家が恐怖心を克服するため、拒否されることを前提にクリスピー・クリームを訪れ、オリンピックの五輪マークのドーナツを作ってくれと注文します。「そんなものはできません」と冷たくあしらわれることを期待していたのに、なんと、本当に五輪マークのドーナツが出てきます。それを見た起業家は思わず「ワォ!」と声を上げてしまったと言います。

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「ワォ!」とはそんな、人が言葉にできないほどの喜びを経験したときに発せられる表現です。「ワォ!」と声を上げてしまうような製品やサービスなどには“喜び”があります。そして“経験”も得ることができます。また、製品やサービスとの“エンゲージメント”を築くことができます。

「人間中心」の世界では製品やサービスなどは機能的な価値だけでなく、感情的な価値や精神的な価値も重要となります。クリスピー・クリームの五輪マークのドーナツのことがYouTubeで動画配信されると500万回以上も再生され、多くの人に支持されました。

日常のさまざまな課題に対して、マーケティング4.0を取り入れてみる

“縦”から“横”へ思考させることの重要性、人間と人間の触れ合いが求められる、「ワォ!」と驚くような喜びと経験とエンゲージメントが大切。このようなことを聞くと、TwitterやFacebookのユーザーなら「分かる、分かる」と納得できるのではないでしょうか。

マーケティング4.0の時代は、すでに私たちが「なんとなく感じている世界」だと言えます。

コトラーが唱える「マーケティング4.0」の時代は特別な時代ではありません。それでも、ビジネスシーンにおいて少し意識してマーケティング4.0の考え方をさまざまな場面に取り入れることで、抱えている課題に対して違った解決策が発見できるのではないでしょうか。

大橋博之
インタビューライター・編集者・ディレクター。インタビューを中心に活動中。
専門はwebメディア、未来、テクノロジー、カルチャー、クールジャパン、採用関係。

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