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『気になる移住者』地方のNPOで働く魅力とは? 理想と現実の間から見える可能性

2018.02.13

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社会貢献できる仕事がしたい!という人が若い世代を中心に増えています。その選択肢のひとつが、NPO法人(特定非営利活動法人)。「移住と働く」という視点で見ると、せっかく移住するなら地域のために役立ちたいと考える方も多く、地方のNPOが雇用の受け皿になれば、移住促進にプラスです。
今回、取材をお願いしたのは、故郷の秋田県横手市に移住後、NPOを軸に働き続けている椿谷仁志さん(43)。「バンドとNPOは似ている」というかなり変わった視点をお持ちのようで…さて、どんなインタビューになるのでしょう?

撮影協力:旬菜みそ茶屋くらを(秋田県横手市) 撮影:小泉大輔

バンドとNPOは根本が似ている

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●椿谷さんのご経歴を見ると…東京にいた頃は音楽関係やIT広告関連の仕事をされていたんですね。音楽関係とは具体的にどんな感じだったんですか?

大学在学中から関わっていたバンドがあって、一時はレーベルと事務所のマネジメントをしていました。その経験から、バンドとNPOって似ているなと思うところがあるんです。

●いきなり、すごい視点ですね(笑)。どういうことですか?

私が少なからず影響を受けたハードコア・パンクやレゲエなどの音楽は、社会環境や自然環境の現状などに疑問を感じたエネルギーが源泉になっていることが多い。ジャズ・ブルース・フォーク・ロックなどもジャンルは違えど基本的には一緒です。

一方のNPOの活動も現状に疑問や不足を感じて「地域や社会のために自分たちがこの活動をしなければ!」という想いがその背景にあるはずです。どちらも熱い想いで理想の姿を実現しようと懸命にもがいているわけです。

●バンドとNPOもエネルギーの源は同じだと。なるほどですねー。

実際の活動という視点でも、相通じるところがあります。バンドもNPOも、自分たちのメッセージや活動を伝えてファンを作っていくことが重要だし、そうしたファンがいなくては活動が成り立ちません。またフライヤー作りからイベントの仕込み・運営といった業務も共通することが多々あります。

バンドのマネジメントでは、メジャーレーベルとの契約も経験しましたが、私個人はバンドでもNPOでもインディーズにこだわっています。独自性を持って自由度の高い環境で活動し、自活できるようになることが重要です。もちろんそれが生業になり、メジャーなものになればさらに良いだろうし、そうでなくても他に収入を得ながら活動を続けることだってできます。そんなところもバンドとNPOは似ていますね。

みんなの経済新聞の秋田県南版『横手経済新聞』を運営

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●故郷に移住後、NPOを軸に具体的にどんな活動をしてきたんですか?

東日本大震災後、2012年に秋田県南部の横手市にUターンして「市民活動サポートセンター(運営:特定非営利活動法人 県南NPOセンター)」に2年間在籍し、その後、別のNPO法人のスタッフとして働いている感じですね。

●前職の市民活動サポートセンターというのは何ですか?

県が設置した施設で、非営利活動を様々なアプローチで支援するのが役割です。私の主な業務は、日々の相談教務や情報誌の編集に加え、NPOの基盤を強化するためのセミナーを企画・実施していました。

●業務の幅が広いですね。それだけに、やりがいがありそうな。

あとは、行政や企業、他団体との協働を進めるためのワークショップも企画・運営していましたね。やりがいもあったのですが、支援活動をしている中で「そもそも圧倒的にプレイヤーが足りない!」と痛切に感じたので転職することにしました。

●地域貢献は民間企業でも可能ですね。NPOで働くということにこだわっている?

そういうわけではなくて…私の仕事を選ぶ軸は「自分が面白いと思うか」です。そういう視点で仕事を選んでいるうちに、Uターン以前から非営利活動や社会的企業に興味を持つようになり、縁があって実際に働き始めることになったという流れですね。

●今、所属しているNPO「ヨコッター(正式表記:yokotter)」での業務は?

ヨコッターは、SNSで地域の情報を発信することを目的に立ち上げられたNPO法人で、徐々に活動領域が広がっています。現在の私の担当は、みんなの経済新聞の秋田県南版『横手経済新聞』の運営などです。

●みんなの経済新聞というと『シブヤ経済新聞』が有名ですね。

その地域のビジネス&カルチャーニュースを発信するのが役割。地域の記録係として一定の信頼性を担保しながら、既存のメディアとは異なる視点から情報発信をしています。横手経済新聞で私は編集長をしています。編集長というと聞こえはいいんですが、取材撮影・原稿作成・メディアの運営などあらゆることをこなしています。

NPOの仕事の現実。収入が少ないという大きな壁

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●このインタビューを通してNPOで働くリアルを皆さんに知ってほしいと思います。働いている実感でいうとどんな感じ?

他県の実情は分かりませんが、秋田ではまだまだNPOの認知度が低く、それを生業とすることが周囲にも理解されづらいと感じています。実際、求人もそれほどありません。そして一番大変なのは収入でしょうね。福祉や介護系など比較的、安定している職場もありますが、それでも民間企業より収入が低いことがほとんど。

私と同じように、自分が面白い、必要だと感じる事業に関わって収入は二の次という人もいるかもしれませんが、NPOの世界では「寿退社するのは男性」なんて自嘲的に言われていたりもします。家族を持つとなると理想と現実の間で苦悩しちゃうんですよね。

●実際にNPOのスタッフの待遇はどれくらいなんでしょう?

感覚値ではありますが、秋田県内の常勤スタッフだと、マネージャークラスでも大手新卒と同等か、それ以下がほとんどでしょうね。ただ地方だと、民間企業の正社員でも賃金が低い仕事も多いのでそこまでの格差はないはず。そう考えれば、若い方や移住者がNPO法人で働きはじめるのは選択肢のひとつだと思います。
自分は常勤スタッフでもないので、実際、貯金は減る一方。NPOで働いているんだから給料は安くて当然とか、無報酬のボランティア活動で当然だとは思っていませんが。

地方のNPOで働くことのメリットと可能性

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●待遇以外の部分も聞きたいですね。やりがいはいかがでしょう。地方のNPOで働くメリットはありますか?

たとえば、PCの基本操作やネットの情報発信は、都会だったら当たり前のスキルです。しかし、地方のNPOなら貢献できる可能性があります。他の様々なスキルについても同じことが言えると思います。

●同じスキルでも環境によって価値が変わってくると。

そうですね。他のメリットとしては、地方はすべての分野において、まだ手つかずのすき間が多いんですね。たとえば私が今やってるネットを活用した情報発信は都会だったらライバルの多いレッドオーシャンですよね。

それと地方には古くから「結」という相互扶助の仕組みがあったり、秋田には江戸時代に生まれた窮民・孤児救済するための「感恩講」というNPOの元祖のような組織がありました。こうした地方ならではの歴史や背景を活かしながら、新しい仕組みや価値を作ることができるかもしれません。

●椿谷さんが教えてくれた地方のNPOで働いた時のメリットをまとめると、スキルの価値が上がる、手つかずの分野で活躍しやすい、地方の背景を生かした活動などです。こういった特性を理解した上で、地方のNPOに就職した時には、所属する団体に対して活動の幅を広げる提案をしていくとwin-winの関係が築けそうですね。

地方のNPOが新しい働き方の選択肢のひとつになれば、故郷に貢献したい人との架け橋になると思います。モデルケースになるよう期待しています。

東北奥の奥ライター/本間貴志
ビジネス書籍の編集会社「アスラン編集スタジオ」の正社員ライターを経て2015年、秋田県湯沢市にUターン。テレワークを活用して、ビジネスメディアや金融メディアなどを中心に執筆活動をしている。

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