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辛酸なめ子の「ダイバー秘境シティ」
ガンプラ作りで出会った、無欲の店主と修行僧

2018.04.27
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駅前秘境「秋葉原工作室」

クリエイター必見!  秋葉原の、パーツやジャンク系の部品のお店が並ぶ古い雑居ビルをさらに奥に行った先に、知る人ぞ知るディープなスポットがあります。
秋葉原工作室。
工作に関するものは何でも使いたい放題で8時間滞在しても2000円という、良心と創作魂うずまくお店です。なぜこれまでこのお店を知らなかったのかと、ものづくりをしてきた者として反省しました。しかし中に入ったら、もっと反省する事態に……。

「実はプラモデルは好きじゃないんです」と語るクールな店長、山口浩志さん(漫画オタク)。漫画喫茶をやりたいという夢を持ちながらも、他にない形態の工作室をオープン。
「ブラモデルの世界は派閥があっていろいろ面倒なんですよ。誰がうまい下手とか順位が付かないじゃないですか。だから作風や作り方で、ああじゃないこうじゃないってネットに書いたりするんです」
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「今回、私のようなど素人がプラモデルを作って大丈夫でしょうか……」
「大丈夫です、と言いたいためにこの場所を作ったんです。秋葉原工作室は初心者が使うことが多いので派閥はありません」
その言葉を信じて作ってみます。ガンダムをそんなにちゃんと通っていないのにシャア専用ザクのプラモデルに挑戦しますが、いろいろ炎上しないことを祈ります……。

「ここではお客さんからご質問があれば答えます」
プラモデルは嫌いとおっしゃいながらも、店長はなんでも詳しいです。今回、一挙手一投足を手取り足取りサポートしていただきながら作成しました。箱の側面に「8歳以上」と書かれていたのは気にしないようにします……。

まず、箱を開けると「ランナー」と呼ばれる、パーツがくっついたフレームが何枚か出てきます。ニッパーで切り出しながら、説明書に従って組み立てて行きます。不器用なので手元がおぼつきませんが、店長さんは辛抱強く見守ってくださいます。
「バンダイさんのプラモデルは、ボンドなしで組み立てられます。説明書も文字がなくてもわかりやすいです」と、バンダイ推しの店長さん。

「えーと、C4とC8を合わせて、C10をはめて……」
手順を指差し確認しながら、独り言を言わないと作業できません。しかも、ランナーの中に該当番号の部品を見つけるのに結構時間がかかってしまいます。数字を瞬時に見つける訓練、脳トレになりそうです。聞いたら、プラモデルは右脳を開発するので、お受験などにも良いらしいという説が……。たしかに言語なしで、どこに何がハマるか想定するのは、脳細胞を活性化しそうです。しかも、部品がキュッとハマった時の音と感触が快感になりそうです。
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「この作業室は名門大学の部室としても使われています。東大、慶應、早稲田の模型部が使っています」
それを早く教えてください……。
大学の使用情報はツイッターなどで発信されているので、名門大学生と知り合いたい方はぜひ。プラモを最後まで作るような男性はきっと我慢強くて優しいと思われます。ちょっと飛び出たところをヤスリで削ったり、仕事じゃないのに(むしろ出費して)どうしてそこまで……と驚かされます。実利主義に走っていた自分を反省。

ところでプラモマニアは我慢強いとかそれどころではなかったのが、次の行程でわかりました。
「塗装のため、一回組み立てたものをバラバラにします」
どこの修行僧の砂曼荼羅ですか……!。
なんでも、組み立ててから塗ると、色の塗り分けが難しくなってしまうとか。ランナーに部品が付いたまま塗ったら、組み立て作業時に塗装が剥げてしまうので、一回バラすのが最善だそうです。それを聞いて意識が遠のき、このあとのことはあまり記憶にありません。

塗装コーナーでエアブラシ技術を習得

続いて2Fの隣の部屋に移り、エアブラシによる塗装です。マスクや手袋、肘をガードするビニールも完備されていて安心です。女性客も結構多いというのも納得。
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しかし私は美大出身にあるまじきことですが、Photoshopのエアブラシくらいしか使ったことがありませんでした。ですのでまたもや店長に使い方を伺いました。バラバラにしたパーツを、棒の先のクリップに刺して、エアブラシを噴射します。レバーを押して、引く。最初はノズルから空気を出して、塗料が出てきたらなるべく遠くから、うっすら塗布。そして何回も塗り重ねていきます。焦って近くから噴射すると、液体が流れてムラになってしまいます。プラモデル作りと同じく、丁寧に地道にやっていくのが成功の秘訣。
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私も修行僧マインドを奮い立たせて、十数回塗り重ねました。

最後に、金色のパーツをザクの肩部分に装着。「既製品と言われてもわからない」とホメていただき、ひとときの充実感に浸りました。

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女子との出会いはあるのか? 模型男子の禁欲過ぎる世界

でもその充実感は、表面的なものだったということが、6階の工作室に行ってわかりました。
扉を開けると部室のようなムアッとした空気が。中ではメガネ男子たちが真剣に模型作りに取り込み中でした。ディープすぎる空間に、見なかったことにしてドアを閉じそうになりましたが、話しかけると模型男子はフレンドリーでした。
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ここでは有志が集まり、皆さんで相談&協力し合いながら、鉄道模型を組み立てているようでした。切磋琢磨という言葉を体現しています。
「これ、0.5mm出てる」
と、0.1mm単位で細かい作業をしていて、糸や針以上に細く薄いパーツを扱い、明治時代の蒸気機関車などを作成。前世、明治時代の細かい工芸品を作っていた職人さんたちなのかもしれない、と霊視しました。

ちょっと拝見したら、私など目視できない細かいパーツの数々が。
「これ、老眼になったら作れないですね」
「皆、目をやられてるからメガネなんです」と言いながらも、皆さんメガネの奥で少年のような瞳を輝かせていました。
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「工作室での女子との出会い?  求めていたらここには来ないんじゃないかな」
と、やはり修行僧だったような禁欲ぶり。飲食も忘れて作り続けることもあるそうです。
「頭の中にあるものが立体になるのが楽しいんです」
という言葉には、ものづくりの真髄がありました。失いかけていたピュアな創作欲を取り戻せる場所です。
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秋葉原工作室のドアを開ければ、そこには永遠の青春が……。
若返りを期待して(名門大学生のエネルギーを吸収したりとか)、また訪れたいです。

puramo

辛酸なめ子
漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。
近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社) 『魂活道場』(学研プラス)など。
Twitterアカウントは @godblessnameko

秋葉原工作室
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秋葉原駅から徒歩2分にある、プラモデルなど“造る”空間を提供しているレンタルスペース。キット製作はもちろん、塗装ブースも設置し、製作に必要な工具や塗料も貸し出してくれる。
住所/東京都千代田区外神田1-16-10 ニュー秋葉原センタービル 2階
電話/03-5244-4842
Twitterアカウントは @akihabarakousak

写真/千々岩友美

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