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音楽をパジャマにつけて売る!? ユーチューバー/インスタグラマー“あさぎーにょ”が語る、新しいトレンドとファンダムの作り方 ~コミュニティ進化論/前編~

2018.12.07

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音楽業界のリーディング・カンパニーであるソニー・ミュージックレーベルズが、まったく新しい形のオーディションを開催しました。その名も『Feat.ソニーミュージックオーディション』。従来の発掘・育成型のオーディションとは異なり、アーティストやクリエイターに活動資金を援助し、「音楽トレンドを作る」「バズらせる」ことを競うというイノベーティブなイベントで、2018年10月9日には「Zepp DiverCity(TOKYO)」でファイナル審査ライブが開催されました。

応募総数約1000組の中からグランプリに輝いたのは、ユーチューバー/インスタグラマー/ティックトッカー/シンガー/動画クリエイターとして活動中の“あさぎーにょ”。彼女はどのようにしてコミュニティを作り上げ、どのような形で新しい音楽トレンドを届けたのでしょうか。

ソーシャル上で43万人のファンを抱える、肩書き不要のアーティスト・あさぎーにょ

▲あさぎーにょ

▲あさぎーにょ


——『Feat.ソニーミュージックオーディション』でのグランプリ受賞おめでとうございます! あさぎーにょさんのことを知らない読者もいると思うので、まずは自己紹介をお願いできますか?

「はい。私は普段、ユーチューブやインスタグラム、ティック・トックなどのプラットフォームを利用して、テーマに合わせた映像や音楽を作ったり、モデル、タレント、プロデュースを手がけてたりしています。自分では肩書きを「クリエイティブアーティスト」「へんてこポップの人」と名乗ってます」

——あさぎーにょさんのSNSなどのフォロワー数はすごいですね。ユーチューブのチャンネル登録者数は29万人、インスタグラム9.6万人、ツイッター4.3万人。フォロワー数を合計すると約43万人にも及びます(2018年11月29日現在)。

「本当にありがたいです。でも正直に言うと、自分が体験しているワクワクすることの一部を切り取って配信しているだけなんです。実は動画のネタも、その日に決めて、その日に撮影して、翌日にアップする、みたいなスピード感でやっています。それを多くの方々に楽しんでいただけているのが本当にうれしいです!」

大物アーティストのカバー曲からネタっぽい動画まで、大量にアップ

——ユーチューブでは、どんな内容の動画をアップしているんですか?

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「自分のオリジナル曲や、さまざまなアーティストさんの楽曲のカバー動画を作ってアップしています。その他に「有名商品のCMを勝手に作ってみる」とか、「今よりも太っていた時代の写真を公開」「妹に軟骨ピアスを不意打ちで開けられる」「おじいちゃんにドッキリを仕掛ける」などのネタっぽい動画も沢山アップしています。私の強みは、ぶっ飛んだことを出来ることですから(笑)」


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CDではない音楽の売り方があっても、いいでしょ?

——ネットでは大きな人気を持つあさぎーにょさんが、あえてメジャーフィールドの『Feat.ソニーミュージックオーディション』に挑んだのはなぜですか?

「普通のアーティストやミュージシャンを生むためのオーディションだったら、受けなかったかもしれません。『Feat.ソニーミュージックオーディション』はアーティストを発掘するのではなく、自分で音楽を作って、それをどうやってトレンドにするか? バズらせるか? っていうのがお題でした。それにすごくワクワクしたんです! 普段の私は基本的に撮影編集は自分の中だけで完結してしまうことが多いので、このオーディションに参加したら、もっと世界が広がるのでは?と考えたんです」

▲『Feat.ソニーミュージックオーディション』より。MCの平井“ファラオ”光(お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」)、みちょぱ(池田美優/ファッションモデル)とともに

▲『Feat.ソニーミュージックオーディション』より。MCの平井“ファラオ”光(お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」)、みちょぱ(池田美優/ファッションモデル)とともに

——オーディションでは1000組の中から6組のファイナリストが選ばれ、ソニーミュージックからは6組それぞれに上限300万円の資金と同社の人的リソースが与えられ、様々なキャンペーンを展開することができました。あさぎーにょさんはどのような施策を打ったのでしょう?

「音楽や動画を作るのは当然ですけど、自分的にはその先のことを考えるのがすごく楽しかったです。これは私が前々からやりたかったことなんですが、音楽の届け方を変えようと思ったんです。自分の音楽をQRコードでダウンロード出来るようにして、そのQRコードを自分でデザインしたパジャマにタグとして付けました。次に、表参道に期間限定のポップアップショップを作っていただいて、そこでカラフルなシリアル(コーンフレーク)、エプロンを用意しました。もちろん、両方ともQRコードが付いていて新曲がダウンロードできるようにしています。ちなみにZepp diverCity(TOKYO)で行われた最終審査では「読む音楽」というテーマで、絵本にQRコードを付けて新曲を発表させていただきました」

▲『Feat.ソニーミュージックオーディション』で「読む音楽」を披露

▲『Feat.ソニーミュージックオーディション』で「読む音楽」を披露

▲シアトリカルなステージ演出にも注目が集まった

▲シアトリカルなステージ演出にも注目が集まった

——音楽というとCDやMP3などのメディアで発表するのが一般的だと思うのですが、あえてモノに音楽を付けた理由は?

「私はユーチューブにオリジナル曲や、カバー曲の動画を沢山アップしていますが、ファンの方から「CDを出してください!」という声が大きかったんです。でも、私自身は音楽だけを届けるということに実はあまり興味がないんです。音楽と映像が一緒になったMV(ミュージック・ビデオ)を観て欲しいっていう気持ちの方が大きいからです。そこで考えたのが、MVの中で着ている衣装など、私が関わった“何か”に音楽がついていたら楽しいな、ってことです」

——ファンの方々の反響はいかがでしたか?

「私、このパジャマやシリアルを作っているときも、ずうっとインスタやツイッターで発信し続けていたんです。『ここまで出来たよ』とか。私がどういう想いでこれを作っているのかを知ってもらっているので、これを受け取ったファンの人たちも、ただのパジャマ、ただの曲ではなくて、それ以上のものを手に入れたという感じで受け止めてくださっているみたいなんです」

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ダサい自分をとりあえずアウトプットし、ストーリー化する

——作っていく過程を見ているからこそ、より応援したくなる。そうやってあさぎーにょさんのコミュニティは出来上がったのかもしれないですね。

「実は私、パジャマを作っている時に『失敗した』とか『すみません、作るの遅れてます…』っていうのも全部ネットで書いちゃってたんです。そういう私のストーリーを含めて共感してくれたのかもしれないですね。そういうダサい自分をどんどんさらけ出していくことが、観ている方々の心に残るし、武器にもなるんだな、ってことがわかりました。私はそもそも美しい人でもないし、特別なスキルを持っているわけでもない。ただの普通の人なんです。だけど、そういうダサい自分をとりあえずアウトプットしちゃう。この考え方はものすごく大切にしてます」

▲Zepp DiverCity(TOKYO)で行われた、オーディションの最終審査

▲Zepp DiverCity(TOKYO)で行われた、オーディションの最終審査

▲会場には、あさぎーにょの姿をカメラに収めるファンも多数

▲会場には、あさぎーにょの姿をカメラに収めるファンも多数

——こうして沢山の共感を得て、見事オーディションでグランプリに輝いたわけですが、ご自身はどんな心境でした?

「今までユーチューバーとして多くの人に認識されていましたが、もっといろいろなことに挑戦する人として認識してもらえたし、もっと、あさぎーにょという人間を応援しようという方が増えた印象がありました。それと、こういう規模の大きいことは今まで1人で活動してきた私にはやりたくても出来なかったことなんです。なので、これからはいろんな人と組みながら、自分のやりたいことをどんどん追求していけたらいいなって考えています!」

——あさぎーにょさんは、すでにティック・トックの公式CM動画を作ったり、グリコ『ポッキー』とのコラボで歌&ダンス動画をティック・トックで公開するなど、企業と組んだ取り組みもたくさん行ってますよね。

「はい、いろいろな企業さんがアプローチしてくださるのはありがたいです! でも、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、案件によっては断ってしまうこともあるんです……。やっぱり、みんなが観ていてワクワクするようなもの、みんなと一緒に楽しめるものでないと、あさぎーにょがやる意味がない。私のやっていることを理解してくれて、クリエイティブな面も一緒に考えながら楽しんでやっていただける方々とは、どんどん組んでいけたらいいなって思っています」


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——SNSなどのプラットフォームの使い方で苦戦している企業も多いと思うのですが、もしも、あさぎーにょさんが企業のプラットフォーム戦略を考えるとしたら、どんなことを考えます?

「私みたいな人間が言うのもあれなんですが……宣伝したいことを一番に考えずに、そのプラットフォームで何ができるのか、何がフィットするのかというのをメインに考えながら作っていくといいような気がしています。企業さんの場合、『この商品を打ち出したいから、ネットで流行らせたい』という考え方が一般的だと思います。でも、一般の方々は宣伝宣伝したものをあまり求めていないような気がします。ユーチューブとティック・トックでは観ている側の楽しみ方も違うし、求められているものも違いますし」

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——具体的に説明すると、どういうことですか?

「たとえばティック・トックは15秒くらいの動画が中心で、その15秒に情報を詰め込むことを考えます。でも、その観せ方はあまりユーチューブに合っていないんです。ユーチューブの場合は、もっとゆるいというか隙間がある気がしています。それぞれのプラットフォームで面白いと思えるものが、ちょっと違うんです。だから、それぞれのプラットフォームで面白くなるコンテンツを考えなくちゃいけないし、それぞれのプラットフォームごとにひとつひとつ作品を作り上げていく感覚のほうがいいのかもしれません」

——そこまで考えてやってらっしゃるんですね。

「自分の感覚でばかり語ってしまって申し訳ない部分もあるのですが……。でも、どのプラットフォームでも、結局、みんながワクワクすること、楽しんでもらえるものを作るのが一番だと思います!」

——最後に今後のご予定をお教えいただけますか?

「ないです(笑)! やりたいことはその日に決めて、その日にやっちゃう人なので! 私、本当に生活の中で浮かんだアイデアを瞬間、瞬間で考えて作って生きているんです」

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あさぎーにょが作り上げた「モノに音楽を付けて売る」という新しいトレンドは、多くのファン=フォロワーがいてはじめてなりたつものであることは間違いありません。そのファンダムを獲得するために彼女は自分をさらけ出し、モノを作る過程でさえ、ひとつのストーリーとして見せていくということを行っています。彼女のやり方は新時代のマーケティング戦略や、コミュニティ作りの参考になるかもしれません。
『Feat.ソニーミュージックオーディション』の話はまだまだ続きます。次回、同オーディションの総合プロデューサーである梶望さんに、音楽業界の新しいマーケティングの波について語っていただきます。

宇多田ヒカル、AIなどの宣伝プロデューサーが語る『Feat.ソニーミュージックオーディション』で提示した独自のアルゴリズムと、新しいトレンドの作り方 ~コミュニティ進化論/後編~

▲あさぎーにょ(左)と、ソニー・ミュージックレーベルズ梶望さん(右)

▲あさぎーにょ(左)と、ソニー・ミュージックレーベルズ梶望さん(右)


あさぎーにょ
ユーチューブやインスタグラム、ティック・トック等で活躍するクリエイティブアーティスト。「へんてこポップ」をテーマに映像制作、楽曲制作、CM制作、モデル活動、タレント活動、プロデュース活動、イラスト制作を行う。2018年に行われた『Feat.ソニーミュージックオーディション』に応募。CDやMP3に頼らない新しい音楽の届け方を考案し、グランプリに輝く。

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取材・文/尾谷幸憲、撮影/千々岩友美、編集プロデュース/藤田薫(ランサーズ)

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