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インサイトレポート

起業でも、転職でもなく、社内で新しい働き方を手に入れる。メディアも注目するサイクルショップ「STYLE-B」を作った元エンジニアの挑戦

2019.03.20

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東京・五反田、東急池上線の高架下に2018年に新しくできたサイクルショップ「STYLE-B」。カフェや八百屋さん、コインランドリーまでもが同じテナントに入り、一見すると自転車屋さんには見えないおしゃれな雰囲気が特徴だ。

しかし、この店舗の面白さは何も外観やコンセプトだけではない。運営を手がけているのは、中堅システムインテグレーターである日本コンピューターダイナミクス社(以下、NCD)というシステム会社。そう、まったくサイクルショップとは縁がなさそうでありながら、実は自転車パーキングの業界トップクラスのシェアを誇る会社の新規事業なのだ。

そして、今回の主役。「STYLE-B」を立ち上げ、現在も店長を務める東光陽(ひがし・みつはる)さんも元エンジニア。過去には転職も考えたこともあるというが、現在は社内にいながらまったく畑違いの店舗運営に関わり、本人も好きを仕事にできているという。なぜ、システム会社からサイクルショップが生まれたのか?そして、本人の働き方はどう変わったのか? 東さんに伺った。

高架下の資材置き場がスタイリッシュな自転車スポットへ

——五反田のSTYLE-Bにはじめて来ました。 まずはお店のこだわりポイントから教えてください。

東光陽さん(以下、東):お店を見渡していただくとわかるかと思いますが、よくある街の自転車屋さんとは雰囲気が少し違いませんか?

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——カラフルな自転車が展示されていて、入り口にはおしゃれなカフェスペースがあったり、野菜やお弁当を販売しているコーナーがあったり……何だか全体的にスタイリッシュです。

東:ありがとうございます。STYLE-Bは「自転車を通じて、日々の生活をもっと楽しく、もっと便利に、もっと充実した時を」をコンセプトに立ち上げました。あくまでサイクルショップなんですが、誰もが気軽にふらっと立ち寄れる雰囲気づくりを心がけています。

店舗の奥には、月極めの駐輪場やメンテナンススペースなどもあり本格的な自転車ユーザーのニーズにも応えながら、実際の利用者は主婦やサラリーマン、カップル、学生などのライトユーザーが中心になります。

他にも、アメリカ西海岸生まれのおしゃれな自転車ブランド「Pure Cycles」をレンタルしてサイクリングを楽しめたり、24時間営業でふとんの丸洗いもできる大型洗濯乾燥機も備えたコインランドリーを併設していたりと、今まで自転車に興味のなかったご近所さんなども足を運んでいただいています。

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——とても面白いコンセプトですね! なぜ、この地にサイクルショップを立ち上げようと思ったのでしょうか?

東:もともとは線路の高架下の資材置き場でした。ここを有効活用できないかというお声がけをいただき、当社から企画を提案し、プロジェクトがスタートした形になります。

会社としては新規事業であり、私自身も今までとガラッと変わった仕事内容だったので、まさにチャレンジでしたね。

6年前に思い描いたプランを実現

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——日本コンピューターダイナミクスという社名からもIT企業のイメージが強いのですが、なぜサイクルショップを手がけたのか? NCDの事業内容について教えてください。

東:NCDは主力事業であるソフトウェア開発をメインに創業した会社です。創業当時からベンチャーマインドが強かったのでいろいろな事業を手がけており、その1つが1997年からはじめた自転車駐輪場関連の事業です。

時間貸しや月極め駐輪場の運営では全国トップレベルのシェアがあり、さらには、レンタサイクルからメディア・ECサイト運営まで、幅広く自転車関連事業を手がけ、今回のショップ運営に至ります。

——システム会社として創業し、現在は自転車関連の場やサイト運営まで行なっているのですね。

東:はい。これまではBtoBや行政に向けてのビジネスモデルだったので、サイクルショップのような一般ユーザー、つまりBtoCのビジネスは当社にとっても新たな挑戦でした。

——その新規プロジェクトに東さんはどんな背景があり携わることになったのでしょうか?

東:まず私の経歴を振り返ると、NCDに入社したのは今から約20年前です。新卒で入った測量会社を辞めて、第二新卒でサーバ・ネットワークエンジニアとして当社で働きはじめたのです。

転機になったのは、約6年前。3代目の社長に代わったタイミングでビジネスプランコンテストが開かれたこと。会社が行なっていた自転車駐輪場にサイクルショップとカフェを併設すれば面白いのではと思い事業プランを提出したのです。趣味で自転車に乗っていたことや、子どもが生まれたタイミングと重なり、そんな場所があれば利用したいなぁという妄想を膨らませて提案しました。

結果、30名くらいの応募があった中で2名だけに与えられる社長賞を私もいただくことができました。

——ご自身の思いがこもった提案だったのですね。

東:はい。しかし当時は、そのアイデアの実現には至らなかったのですが、私自身の転機にはなりました。エンジニアの部署からNCDのもう1つの主力事業である自転車駐輪場の営業に異動届を出して自転車には関わることにしたのです。もともとやりたいことへの自由度が高い会社ですし、せっかく自転車に関わる提案もしたし、より好きなことに関わってみたいなと思って。

STYLE-Bは、そんな過程を経て巡り巡って生まれた機会なので、話が出た時には自分がやりたいとすぐに手を挙げることができました。

——6年前の企画が今になって実現したのですね。プロジェクトを任されることが決まった時の気持ちはいかがでしたか?

東:自分が思い描いたものがリアルに実現できるというのは嬉しかったですね。同時に、ビジネスプランコンテストの時は、インターネットで軽く情報を調べて提出したプランだったので、実際の店舗で計画から運営まで携わるとなると簡単ではないなという不安ももちろんありましたよ。

働き方改革を進める会社の方針と仕事量のジレンマ

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——それまで(エンジニアやパーキングシステムの営業)とは全く異なる、店舗の立ち上げ・運営という仕事への転換によって、働き方はどう変わりましたか?

東:新規事業の立ち上げは想像以上にパワーを使いました。今までは、月曜日から金曜日まで出勤して土日は休みという会社員としては普通の業務形態でしたが、STYLE-Bに携わってからは休みの日がなくなるくらい膨大な仕事量になりましたからね。

それでも、会社としては働き方改革のもと、業務時間や残業時間の削減を掲げていたので、仕事はあるのに働き過ぎてはいけないジレンマがありました(笑)。

——会社としては社員に負荷をかけたくない。でも、新規事業なので仕事はたくさんある。その中でどうバランスを取っていたのですか?

東:週末に働いたら、平日に午前休を取って睡眠にあてたり、休みの日にサイクリングと視察を兼ねて都内各地の自転車スポットを回ったりしています。例えば、STYLE-Bのデザインは広島尾道にある「尾道U2」を参考に。ここは昔、倉庫だったところをフルリノベーションして自転車を置けるホテルやサイクルショップとして運営している場所で、実際に訪れた際にスタイリッシュな雰囲気に魅了されて、U2を手がけたデザイン会社に交渉してSTYLE-Bの設計をお願いしました。オンとオフのバランスが取れていたかはわかりませんが、こういう何もないところから作り上げる仕事は大変ですが楽しく夢中になっていました。

——立ち上げ準備は、全部お一人で行なっていたのですか?

東:いえいえ。でも、実質3人で0から立ち上げていたので、店舗の設営の他にも、計画書の作成やプレスリリースの作成など、やることはたくさんありました。私自身エンジニアのキャリアがあったのでITには強く、店舗のHPを制作、店のインターネットインフラを整えるときには経験を活かせました。あとは、引くに引けない覚悟を持って仕事をしていたので、自分で言うのも何ですが集中力がすごかったと思います。

——ご自身の強みを活かし、覚悟を持って立ち上げた店舗ですからオープン時は喜びもひとしおだったのでは?

東:それがですね……店舗のオープンがゴールだと思って準備していたのですが、当日になると、ここからが本当のスタートだという気持ちでより責任感が芽生えました。同僚からは込み上げて来るものあれば泣いていいよと言われたんですが、そんな余裕はありませんでしたね(笑)。

ただ、オープンの前日、TVや新聞などたくさんのメディア関係者を呼ぶプレス向け公開イベントをして、夕方のTV番組でも放映された際は、これからいろいろな人に利用される場所になるんだという思いから、グッと来るものがありました。

——今まではエンジニアや営業担当だったのが、TVに取り上げられる店舗の運営担当になるって、人生何があるかわかりませんね。立ち上げてみて楽しいことや、逆に思ったより大変だったことがあれば教えてください。

東:売り上げ目標をクリアしていくのは思った以上に難しいことだと感じています。他にも、大変なことはたくさんありますが走りながら考えています。

楽しいことは、今までのキャリアの中でお客様は企業や行政の担当者でしたが、STYLE-Bでは近所の方々も多く、「自転車の調子どうですか?」と声をかければ「乗り心地いいです。ありがとうございます」と直接声を聞けること。私も自転車が好きなので、自分の趣味も少し反映しながら店舗づくりをして、お客様にも喜んでもらえるのはやっぱり嬉しいですね。

新たなチャレンジは社外ではなく社内でもできる

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——最後に、東さんがこれからチャレンジしたいと考えていることを教えてください。

東:今回のプロジェクトを通じて、0→1で作り上げることが好きだと感じたので、また新規店舗の立ち上げには関わりたいですね。でも、現在は五反田の店舗の地固めの時期。いろいろなところからSTYLE-Bを出店できないかという問い合わせは来ていますが、既存店舗の運営に力を入れています。

また、将来的には店舗に限らず自転車という商材を使った新しいことをやっていきたい。例えば、ITはこれから切り離せないキーワードなので「自転車 × IT」の分野とかですかね。

——それも今のNCDならいろいろできそうですね。

東:はい。すでに社内でもいろいろなプロジェクトが動いていますからね。実を言うと、若い時に転職活動をして他社の採用面接を受けたこともありますし、隣の芝生が青く見えた時もありました。でも、NCDに留まったのは、社内で転職できるくらいいろいろなチャレンジができる会社だったこと。それが、私が20年以上この会社にいる理由の1つでもあり、今後も会社のリソースを活かしながら挑戦を続けていきたいと思っています。


STYLE-B
https://style-b.jp/

・取材/文/撮影:松田然

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