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タニタの「働き方改革」は、会社員と個人事業主のいいとこ取り!?第1期生が語る、新しい挑戦にもがき見えてきた”成功へのカギ”

2020.04.22

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働き方改革の名のもと、各社が残業時間削減やテレワークなどの制度を整えている中、社員の雇用形態や働く意識までをも改革しているユニークな企業があります。

体脂肪計や歩数計などの健康計測機器や健康サービスを提供している株式会社タニタ。

同社は、社員が個人事業主に転換して働くことを支援する「日本活性化プロジェクト」を2017年からスタート。勤務時間や働く場所が自由になり、手取り収入もアップするなどの可能性が広がる仕組みで、現在24名(2020年3月現在)の元社員がこの仕組みを活用して働いています。

しかし、メリットだけではなく業務量や収入が不安定になるなどのデメリットを伴うのが個人事業主という働き方の一般的なイメージ。同社は、この取り組みを導入するにあたりどのような工夫を取り入れたのでしょうか?

今回はこのプロジェクトの1期生として、同社の仕事も担いながら社外でも活躍のフィールドを広げている久保彬子さんに、この取り組みに参加した理由、そして実際に働き方はどう変わったのか? を伺いました。


久保彬子(くぼ・あきこ)
2007年タニタに入社し、国内営業を10年担当。2017年、「日本活性化プロジェクト」に1期生として参加するとともに新規事業推進担当に。社長特命案件であるゲームコントローラーをつくる「ツインスティック・プロジェクト」の責任者を務めるほか、ポップカルチャーなどとのコラボレーションする商品を手掛ける。

働き方を主体的に変えていける取り組み。チャレンジした人の共通項とは?

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ーー まず、貴社の働き方改革「日本活性化プロジェクト」について教えてください

久保彬子さん(以下、久保):簡単に言うと「会社員」と「個人事業主(フリーランス)」の、いわば「いいとこ取り」できるような仕組みです。

会社員であれば収入は安定しているかもしれませんが、働く場所や時間、給与、誰と働くかなど、ある程度決まっています。だからと言って、起業したり個人事業主になったりするほどの勇気や常に安定した収入を得られる自信がない人がいると思います。

「日本活性化プロジェクト」は、タニタのプロジェクトに関わり、安定的に仕事や収入を確保しながら、タニタ以外の業務を受託したり、個人で別の事業を行ったりすることで、経験値や報酬を上げたり人的ネットワークを広げたりするなど、個々人が働き方を主体的に変えていける仕組みです。働く人が主体性を発揮できるようにしながら、報酬面でも本人の努力に報いることを目指して、2017年1月からスタートしました。

ーー 久保さんはプロジェクト1期生と聞いていますが、初めてこの話を聞いたときはどう感じましたか?

久保:面白そうだなと思いました。2016年の秋頃に社内でこの取り組みが説明されたのですが、実は私自身はその頃に転職も考えていたのです。新卒で入社してから10年間ずっと営業職だったので、今後も1つの会社で1つの仕事のままでいいのかと不安を感じていて……。ちょうどその頃、世間でも複業やパラレルキャリアなどのキーワードが話題となっていました。この仕組みを活用すればもっと新しいことにチャレンジできるのではと思い、プロジェクトメンバーとして手を挙げることにしました。プロジェクトの初年は私含め8人が志願しています。

ーー 久保さんは転職やキャリアチェンジを考えていたタイミングでもあったのですね。他に、この取り組みに手を挙げた中にはどんな方がいたのでしょうか?

久保:年齢は30歳代前半から50歳代前半までと幅広く職種もバラバラでしたが、共通していたのは“タニタのことが好き”だったことでしょうか。私も、社員に対して「いろいろチャレンジしていいよ」と言ってくれるタニタのカルチャーが好きでした。転職して他の会社に移るのではなく、引き続きタニタの事業に関わりながら外の世界にも挑戦できる立ち位置はとてもいいバランスでした。

ーー 現在は社内外でどんな仕事をされているのでしょうか?

久保:プロジェクトに参加後、社内では新規事業開発の仕事にチャレンジしました。個人事業主はライターやカメラマンなど専門職が多く、独立後も今までと同じ仕事をするイメージがありますよね。ですが、私は入社してから10年間営業職でずっと同じ部署で仕事をしていたので、社外でもこのスキルや経験が通用するか正直わかりませんでした。そのため、私の場合は多少イレギュラーではありますが、思いきってタニタ内で別の部署で新しい仕事に挑戦することにしました。会社員であれば、組織の事情で配属部署が決まることも多いのですが、個人事業主だからこそ自分の意思で新たなキャリアを構築していきたいと思ったからです。

実際に、このプロジェクトを通じて得た経験や感じたことを発信する機会を得たり、新しい働き方の選択肢として取材されたりすることも多くなり、次第に周りの知人から声かけられてタニタ以外の仕事を手伝うことも増えてきました。

会社を辞めるか続けるか以外に、新しい選択肢ができた

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ーー 「日本活性化プロジェクト」は社会的にも新しい取り組みなので、実際にはじめてみてメリットやデメリットを感じたと思いますがいかがでしょうか?

久保:そうですね。まずはタニタを退職する形になるので、そこだけ切り取るとネガティブに聞こえるかもしれません。しかし、少なくとも3年間はタニタの仕事を請け負える契約になっており、その後も毎年、複数年契約を更新していきます。このため、仕事と収入の安定を会社がバックアップしてくれますので、安心感を持ちながら、新しい挑戦ができることがメリットです。

今までは、会社員を辞めるか続けるか、もしくは転職するかしないかしか選択肢がなかったところに、新たな道ができたと感じています。

私自身は、いきなり独立・起業して何かすごいことをしたかったわけではなかったので、こういった形でタニタに関わりながら、他でもチャレンジできるのは嬉しいことです。

また、多くの個人事業主の方が抱える課題として、仕事を得るために毎回案件ごとに営業して契約したり、税金対策や確定申告のために多くの時間を割いたりといったことがありますよね。この取り組みは、そういった点でもバックアップ体制が充実しています。例えば、先ほど触れたように長期の業務委託契約を結べることで、仕事を安定的に得ることができます。また、日本活性化メンバー全員が加入する「タニタ共栄会」という相互扶助の団体を通じて、税理士など専門家のフォローを受けられたりフリーランス用の賠償責任保険や所得補償制度に加入できたり……こういった仕組みがあることを心強く感じています。

そして、何よりのメリットは、働く場所、時間、人を自ら主体性をもって選べること。社員であれば、与えられたメンバー(部署)でやりくりしないといけません。日本活性化プロジェクトメンバーは委託された業務を遂行する手段は任されていますので、これらを自分の裁量で決められます。選べるかどうかは、仕事の進めやすさはもちろん、成果にも影響してくると思います。この違いは大きいですよね。

ーー このプロジェクトには個人事業主として働くデメリットを補う仕組みがあらかじめ設計されているのですね。

久保:そうですね。あえて個人的な課題を言うと、際限なく仕事ができてしまうことですね。個人事業主になると、仕事とプライベートの境目が無くなり、楽しいけど大変という状態になる人は多いと思います。社員のときは何時から何時までと勤務時間を会社に管理されるので、残業が続くと良くも悪くも会社からストップがかかりますが、個人事業主にはこれがありません。

個人事業主になって最初の1年目は、タニタ内の業務でも大きな変化があり、かつ、タニタの仕事以外に他社の仕事も受けていました。それに加えて個人事業主の働き方を学ぶために起業スクールにも通っていたので、詰め込みすぎていたかなと思っています。

ーー 新しい取り組みにチャンレンジすると最初は大変なこともありますよね。

久保:それもありますが、今振り返ってみると最初はもがいていたのだと思います。例えば、今まで「タニタの久保です」と名刺を渡していたのが、会社名ではなく個人として名刺を渡すことになります。「私は何の久保だろう?」と迷いが生まれました。もっと自分をブランディングしないと! と感じて……起業スクールに通ったのもそのためです。

しかし、3年経った今感じるのは、自分のできることをしていけば、意外に個人事業主として働いていけるということです。そもそも個人事業主になった目的は起業ではなく、会社に依存せず働ける力を身に着けることだったので…そう思えてからとても楽になりました。

独立が上手くいくカギは「信頼できる人」を見つけること

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ーー 久保さんのような働き方をしてみたい読者の方もいるかと思いますが、どうしたらできるかアドバイスはありますか?

久保:私の場合、会社に社員のチャレンジを後押しするカルチャーや仕組みがあったことが大きいのですが、もし皆さんが会社員であれば、今のうちから社外で信頼できる人を見つけておくことかなと思います。

ーー 信頼できる人?

久保:はい。独立すると物珍しさからか、いろいろと声をかけてくる人が増えると思います。その中でも、一緒に仕事ができて関係が長続きするのは、利害関係がなくフラットに付き合える人だったりします。それは家族でも友人でもいいですが、家でも会社でもないサードプレイスを見つけることを私はおすすめします。例えば、現在、仕事好きな女子が集まり銭湯を巡るコミュニティを主宰しています。遊びながらも肩肘張らずに仕事の話をしたりできる仲間がいることがとても心強く感じます。

ーー どんな人と一緒に仕事するかは大事ですよね。

久保:あとは、自分はどうなりたいのか、どうありたいのかを知ること。会社員として働く場合は、自分にあっていない仕事もやらないといけませんが、日本活性化プロジェクトメンバーは自分の意志で決められることが多くなったので、よりイキイキと働くようになった人が多くいます。

私自身は、この仕組みで働き始めた当初、できないことがたくさんあるなと感じました。けれども、いまは自分で全部やろうとせず、うまく周囲の人に頼って、自分の強みを生かして仕事をすることを心掛けています。3年間、この仕組みで働いてみて、自分は「人が分かる」、人の得意を見極められるのが強みだと分かってきました。プロジェクトで足りない人的リソースがあったときに相談をもらって、「この人が手伝ってくれるよ」「この人ならできるよ」と人と人をつないだり、ときには私が直接協力を取り付けたり。タニタで担当しているゲームコントローラーを開発するプロジェクトもその1つ。私はゲームを全くやらない素人でしたが、ゲームに詳しい社内のメンバーに相談したり、ゲーム関連企業に協力いただいたり、多くの関係者を巻き込むことが成功につながったと思っています。いま、この強みを強化するための勉強をしていて、今後、みんなの「かかりつけ医」のような存在になりたいと思っています。

ーー 「かかりつけ医」のような存在という表現は面白いですね。最後に、久保さんがこれからチャレンジしたいと考えていることを教えてください。

久保:私が担当してきたタニタのゲームに関するプロジェクトを引き続き行うとともに、これからも他の新規事業の創造に向けて挑戦していきたいですね。社外でも、個人事業主になって最初の1年は苦労したこともありましたが、3年経って人と人との繋がりも作れてきました。これらの経験をもとに新たなチャレンジをしていく予定なので、これからが楽しみです。

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・取材/文/撮影:松田然

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