前編に引き続き、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」のCEOである梅崎伸幸さんに、現在の日本のeスポーツ業界を取り巻く現状について伺っています。
今回の後編では、梅崎さんが選手を引退し、マネージャー業に専念されたきっかけや、今後のゲーム業界において計画中の未来構想について伺って来ました!
前編:日本初のフルタイム&完全給与制のプロeスポーツ集団「DetonatioN」を立ち上げた、梅崎伸幸氏の歩む道
−個人のプレーヤーとして世界に出ていきたいという方もいる中で、梅崎さんはプレーヤーとしては2013年に引退され、マネージャーの立場になられました。その理由はなんですか?
梅崎:2012年に出場したWCG(World Cyber Games)2012が一つの大きな要因ですね。
この大会のグループステージの出来事なんですが、どこの国と戦ったかというと、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン・・・簡単に言えば、ゲーム後進国と思っていたような国だったんですね。ところが、実際には戦った結果、なんと我々日本代表が最下位になってしまったんです。eスポーツで言うと、日本はむしろ後進国だったんですよね。
それがもう悔しかったのと、会場にはトーナメント表が貼ってあったんですが、なぜか日本だけチーム名がマジックの“手書き”で書かれていたんです。
私は相当負けず嫌いな方ですが、こんなに屈辱的なことは初めてでした。もう、絶対に見返してやろうと。強さだけじゃなくて、ブランド力も含めて、全部で勝ってやろうという気持ちになりましたね。
−それは確かに屈辱的ですね…。
梅崎:本当に腹が立ちましたね。なので、映像としてパソコンに残してあるんですよ。そのときの気持ちを絶対に忘れたくないので。
−その後、2015年2月から今回の取材場所でもある、こちらのゲーミングハウスを運営されていますが、設立までにどのような経緯があったのでしょうか?
梅崎:まずは、チームの活動拠点としての「場」を確保したいという想いがありました。結局、世界と戦う上で一番重要なことは、彼らと同じ土俵に上がること、つまり環境を整えてあげることなんですよね。まずは、そこがスタートだと思ったんです。
あとは、日本がチームとして勝てるか勝てないかというのは、彼らの頑張り具合や市場がどれだけ伸びるかにもよりますが、私は可能な限り、負けに繋がるような「言い訳」を作りたくなかったんですよね。「これがなかったから負けました」とか、そういうものを一切なくしたいと思っていました。
「私たちは、これだけのことをやりましたよ。じゃあ、あとは君たちの番だよね?」と。まあ、もちろん実際はそんなに甘くはないんですけどね。でも、常に挑戦の気持ちを持って戦ってもらいたいというのはあります。
(梅崎さん自身相当こだわったという、DetonatioN Gamingのビジュアルイメージ)
−最近では、国内でも業界に対する注目度が高まって来ている印象です。海外と比べて日本が改善しなければならない点はどこですか?
梅崎:日本だと、やっぱり「ゲームは遊びですよね」とか、「頭が悪くなるためのものですよね」とか言われるんですが、そうじゃないですよと。そういうところは見せていかないといけないと思いますね。
「ゲーマー=クール」というようにすることが、非常に重要なんじゃないかと思っています。なので、まず足りないところで言えば、彼らを「もっとカッコよく見せること」ですね。そこを重点的にやっていきたいと思っています。
−梅崎さんは現在、様々な立場でお仕事をされているかと思います。こちらのチームのマネジメント業務とその他の業務でいうと、どのぐらいの割合になるのですか?
梅崎:今はこのチームの管理が全体の20%で、その他が80%くらいですね。その20%の中でも絶対にやらなきゃいけないことと言えば、お金の管理です。それと選手たちの状況の把握、そして実力の底上げ。そのためにコーチ陣もいるんですが、選手たちとちゃんと話をして、彼らの状況を知るということが大事な仕事ですね。
その他の仕事で言えば、私はやはり新しく仕事を取りに行かないといけないので、仕事を取りに行くこと。あとは経営企画、構想などを考えないといけないですが、もう忙しすぎて…(笑)。
−その中でも今、特に力を入れているお仕事は何ですか?
梅崎:力を入れなきゃいけないところと言うと、言い過ぎかもしれないですが、このeスポーツ業界全体を囲い込めるような、“巨大なプラットフォーム”を作らないといけないと思っています。
例えば、「ここに依頼すれば、eスポーツ絡みの関連ゲームについては何でも宣伝できますよ」とか、「人材を派遣してもらえますよ」とか、そういう仕組みを作ろうと考えています。今はもう、ずっとその打ち合わせをしていますね。
−それでは最後に、梅崎さん自身が今後どうありたいか、どういった世界を実現していきたいのか、お聞かせください。
梅崎:最近、業界の方に「あなたはもう自分たちのチームだけじゃなくて、人を育てる側、裾野を広げていく側に大きく携わりなさい」ということをよく言われるんです。なので、そういった一環として専門学校の講師を引き受けたという経緯もありますし、そこは業界の中心人物として、この先ずっと業界を支えていきたいという気持ちがあります。
−業界全体に注目が集まって来ている中で、そこの中心人物であり続けていくと。
梅崎:はい。「中心人物は誰?」と言ったときに、「私です」と胸を張って言える立場に私はいないといけないと思っています。
−なるほど。梅崎さんの言葉から確固たる想いを感じました。今後の多方面に渡るご活躍を期待しております!本日は貴重なお時間をありがとうございました!
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