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テレワーク・HR Tech・AI採用――テクノロジーがもたらす業務のパラダイムシフトとは? 第1回 Work Switch DAY 2019「働き方改革時代の生産性向上」【前編】

2019.10.15

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少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、2030年を境に人手不足が深刻化するといわれる今、企業にとって生産性向上は喫緊の課題であるといえます。一方で、「生産性向上=効率化」という考えのもと、長時間労働の是正など労働量の削減だけにフォーカスし、結果として社員の疲弊を招いているケースも珍しくありません。

本来の生産性向上とは、単なる効率化にとどまらないのではないか――。

ワークスイッチコンサルティング(以下、WSC)は、2019年8月28日に「第1回 Work Switch DAY 2019 働き方改革時代の生産性向上」を開催しました。「労働量の減少」だけでなく、人間関係や職場環境といった「付加価値」の側面からも労働生産性の向上を考える必要があるのではないかと問いかけ、WSCが取り組む最新トレンドについて、経営・現場目線でどう活用していくのかを各領域の識者にお話を伺いました。

本記事では、テレワーク後の組織マネジメント、テクノロジーを用いた人事、採用業務のAI化をテーマにした前半3セッションの様子をお伝えします。

第1セッション テレワーク導入後の組織マネジメント
~首都圏ビジネスパーソンのテレワーク意識調査結果から、働き方の未来を考える~

第1セッションでは、一般社団法人日本テレワーク協会客員研究員の椎葉(しいば)怜子さんと、WSCでテレワークコンサルタントを務める成瀬岳人が「テレワーク導入後の組織マネジメント」について話しました。

時間や場所に縛られない働き方として、注目が高まるテレワーク。直近では、2020年の東京オリンピック開催に伴う交通混雑を避け、都市機能を維持するのに有効であるとして、政府が積極的な実施を呼びかけています。
一方で、WSCがインターネット調査を利用して行った『首都圏ビジネスパーソンの通勤とテレワークに関する実態調査(https://www.persol-pt.co.jp/ws/document/1099/)』では、「テレワーク制度があっても利用は週0日が7割」という実態が明らかになるなど、仕組みだけでは運用に結びつかないという現実が明らかになりました。

この結果を受けて、椎葉さんが「導入はしても、後ろめたさがあって使わない社員が多い」と指摘。通勤に支障が出かねない悪天候などをきっかけに、トップや人事から働きかけると利用を推進しやすいと話しました。

「上司が率先してテレワークをすることも大事ですね。まずは、導入のネックになりやすい中間管理職の利用を促し、自分ごととして捉えてもらうことが大切です」

自社内で4年かけてテレワークを定着させた成瀬も、利用しやすい雰囲気づくりが重要だという椎葉さんの見解に同意。自身の組織でも、台風がきたときには通勤を停止して、テレワークで働くようトップが発信するなど、積極的に仕組みを利用するようになったと経験を語りました。

関連記事:「テレワーク制度があっても7割はまったく利用せず」。テレワーク実態調査の結果から、ビジネスパーソンがテレワークをあたりまえに選択するための組織マネジメントを考える

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▲成瀬岳人

テレワークの導入後、課題となるのが「社員同士が顔を合わせない」環境下での組織マネジメントです。テレワークを活用とスムーズな組織運営を両立するためのポイントとして、以下の3つが紹介されました。

1. ICTツールの活用
2. コミュニケーションの再設計
3. 評価の納得感・公平性

ICTツールの1つであるビジネスチャットは、さまざまな問題を解決に導く半面、表層的なコミュニケーションに終始してしまうリスクをはらんでいます。「テレワークをうまく運用している企業ほど、対面MTGなどリアルな接点を重視している」と成瀬。椎葉さんも、「生産性が上がっている企業は、テレワークとともにこまめな業務改善に取り組んでいる」と同意しました。

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▲椎葉怜子さん

テレワークの効果は、すぐに数字に表れるものではありません。まずは「出社しているのと変わらない生産性が保てる」という認識で取り組み、少しずつ体質を改善していくことが、結果的に生産性向上につながっていきます。「テレワークの成果は、ロングスパンで考えるもの」という共通認識をもって、第1セッションは終了しました。

第2セッション データ・ドリブンな戦略人事で従業員体験価値を向上

第2セッションは、データ・ドリブンHRを効率的に実現するEmployee Experience プラットフォーム「BetterEngage」を運営する株式会社BtoA 代表取締役の石原史章さんと、WSC人事コンサルタントの竹下百里が登壇。データとテクノロジーの力を有効活用して的確な判断とアクションにつなげていく新しい人事の在り方について、世界のHRテクノロジー事例を紹介しながらセッションを行いました。

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▲石原史章さん

Smart Recruiters社やEntelo社の事例では、企業の採用方針や求める人材像といった情報をデータ化し、LinkedinなどのSNSや公開情報からAIが選考に進めるすべき人材を自動提案してくれる仕組みが紹介されました。人事業務におけるさまざまなデータ活用の実例を踏まえて、石原さんは次のように語ります。

「HRトランスフォーメーションは、人事のパラダイムシフト。分散している人事データを1つにまとめ、テクノロジーの力を掛け合わせることによって、多くの人事課題をスピーディに解決に導くことができると思います。『何時間働き続けると欠品が増えるか』という過去のデータに基づいて8時間労働制を導入したフォード社のように、人事はデータを活用しながら、生産性改善や、人材教育の高度化など、経営に大きなインパクトを与えることのできる存在になると思います」

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データを活用することで、これまで「1対n」だった施策を「1対1」で実行できるようになり、より個人にフォーカスした課題解決も可能になると言います。

第3セッション 採用業務のAI化 ~未来予測「可能性とリスク」~

第3セッションに登場したのは、Allganize Japan株式会社代表取締役・佐藤康雄さんと、WSC採用コンサルタントの根路銘(ねろめ)梢。AIを採用業務に導入することの可能性とリスクについてセッションを行いました。

はじめに、根路銘が近年の採用に関するマンパワーの増大が顕著であり、課題としている企業が多いことについて説明。これを受けて、AIが採用市場でどのように活用されているのかについて、自社独自の自然言語理解AI(NLU)の導入と活用を支援している佐藤さんが解説しました。

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▲佐藤康雄さん

佐藤さんから紹介されたのは、エントリーシートの確認にAIを活用しているソフトバンクやサッポロビールの事例や、Allganize Japan社の顧客事例です。

「エントリーシートの確認をAIに任せたことで、ソフトバンクさんは75%、サッポロビールさんは40%の時間短縮に成功しています。もちろん時間短縮はそれだけでも大きな成果ですが、本質的な価値は別のところにもあります。人間がエントリーシートの確認を行うと、一貫性・客観性の欠如、相対評価などの課題が発生しますが、AIならこの課題もしっかりと解決し、採るべき人を採ることができるようになるという点も大きなメリットです」

一方で、採用活動にAIを導入する許容度については、「書類選考まで」が56%を占めているという調査結果(株式会社ワークポート調べ)も紹介。AI導入というとどうしても“人対AI”の構図になって拒否反応が起きるが、それぞれの強みを生かしたAIと人との共存をめざすべきだと佐藤さんは話しました。

「理想は、AIと人とのハイブリッド対応。人+AIで、自社にとって必要な人材を見逃さずに採用することができるようになるはずです」

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テクノロジーの力を借りて会社にとって必要な人材を採用し、社員が個々の能力を発揮しやすい環境をつくるには――。前半はテレワークやデータ・ドリブンな人事のあり方、人とAIによるハイブリットな採用業務についてお話を伺い、組織が今取り組むべき戦略のヒントが飛び交うセッションとなりました。後編では、RPAの活用、創造性の可視化、調達業務改革におけるBIの活用についてのセッションの様子をお伝えします。

関連リンク
日本テレワーク協会
BetterEngage
Allganize Japan株式会社

取材・編集/角田尭史(リスナーズ株式会社)、國井麻美子、文/藤巻史、撮影/大西知宏

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